S知事の発案した、1県1市合併構想は、今や全国の注目の的であった。
特に、現行の各市町村議会をほぼ廃止し、日当制の合併特例区協議会制度に移行する案については、多くの市町村が興味を示した。
全国の市町村の中で、大都市を除くと、議員給与=生活給となっている者は極端に少ない。特に地方ではこういった状況が顕著で、議員になる者のほとんどが自営業か、定年退職したサラリーマンである。
「誰でも自由に立候補ができる」制度ではあるが、生活のことを考えると、非常に門戸は狭いとも言える。
これは、経歴の長い議員が存在するというメリットもある反面、新しい血に入れ替わることがないというデメリットもある。
財政的にも、この国のあり方からいっても、「やる気ある人に、しがらみのない議会運営をやってもらう」のが、これからの地方自治には望ましいと考える首長は多いのである。
また、合併特例債の使途について、プレゼンテーション方式で行うとしたことに対し、「実現の場合は、ぜひ取材、参加したい」との声が著名なキャスターや大学教授からあがっていた。
総務省では、「実現して、全国に波及したらどうなるんだ」との声はほとんどなく、議会議員の大半が失職することや、数多く存在する利害関係から、実現の可能性は1%もないと考えていた。
ともあれ、合併協議会は順調に進んでいった。
国民健康保険税は全市で統一。
介護保険料については、沖縄県介護保険公社の例にならい、市を5つの価格帯に分けた。広域化により、施設使用面で柔軟な対応ができることや、在宅介護(施設面より行政費用が安い)をより充実させることができるのは、見逃せない。
水道料、保育料については、当面現行のとおりとし、時期を見て統一していくこととした。
一方で、合併反対派からは、根本的な財政問題について、批判の声があがっていた。
合併してしまうと一挙にふくれあがる、人件費についてである。
一定、現行の役場を支所的に使うとしても、比較的に面積の狭い町村では、統合しても問題ないケースも生じる。こういった場合、管理職が重複することにもなるし、職員もオーバーフロー気味となる。
しかし、S知事は、この件に対しても、明確な回答を準備していた。
(次回につづく)
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