合併物語(3)  (2004.11.15)



 第2回の協議会を迎えた。
 通常、協議される40にもわたる項目すべてを調整するのは困難であるため、ほとんどの項目については、「住民の負担を増やさず、極力サービスを低下させない方向で、新市で調整する」、という方向付けがなされた。

 しかし、どうしても確認をしなければならない項目もいくつかあった。
 まず、「議会議員の定数及び任期の取扱い」である。
 現在の議員数は、全市町村で約1千人。年間議員経費は40億円程度である。
 新市の議員数は、法定数で60人あまりとなり、現行の1市町村1人強程度となる。

 事務局側が示した調整案は、次のとおりであった。

・在任特例なし、第1回目の選挙は選挙区を設置し、定数は県庁所在地の市のみ5名、他の市町村は1名とする
・旧市町村単位の議会は、合併特例区協議会をもって、その機能を代行する
・合併特例区協議会委員は、原則無報酬とされているが、旅費、日当は支払う
 ・合併特例区協議会は、夜間に公聴会を開催するなど、開かれた議会とする。

 現在の議会議員のほとんどが、合併特例区協議会委員にシフトすると仮定した場合、経費を単純比較すると、約30億円が軽減できる計算である。
 また、同時に合併協議会では、参考資料が示された。
 各市町村の議員経費と一般財源(市町村の自前の収入)、そして合併特例区協議会経費の比較表である。
 内容を見ると、一般財源以上に議員経費がかかっている市町村がいくつかあり、それ以外の市町村においても、かなり財政を圧迫しているという印象が強いものとなって いる。
 合併特例区協議会に制度を移行すれば、各市町村とも経費はおよそ10分の1となっている。


 続いての項目は、「市町村建設計画」である。
 当然、内容を議論している時間はない。
 過去に作成された、県の総合計画的な内容にし、地域名や固有名詞はいっさい入れていない。
 「合併特例債は、どう使うんだ」という質問に、事務局側はこう答弁した。

 ・合併特例債は、約4000億円。今後の本県年間予算に匹敵する額
 ・4割程度を使う予定
 ・新規事業は実施せず、現在各市町村の継続が必要な事業、その他の事業の補助 裏に充当していくことを中心とする
 ・使途については、公開の場でプレゼンテーションを行ってもらい、決定する

 また、いわゆる周辺地となる小規模町村からは、「旧各市町村への人員や施設 の配置は」の質問が出た。  
 これについては、「すべてを指標化して、これに基づき配分する。当然、旧役 場所在地はポイントが高くなる。これには、現地で頑張っている人たちの取り組 みの度合いもふまえる」との回答であった。
 同時に事務局は、次の内容を補足した。
・新市では議会議員が面積の割に少ない状況となる。その分情報公開を今まで以上に行う
・議会中継はもとより、施策の判断についても、積極的に公聴形式で実施する。
・すべての議事録は、インターネットで公開し、必要に応じ市民は入手できるものとする

 一見、特に真新しいものはないように感じられる。
 しかし、ここにはS知事の思いが詰まっていた。
 彼は、幕末から明治にかけての、世の中の流れが好きだった。
 市井の一人に過ぎない人々が、藩や国の未来を語り、またそれに対して、集会に集まった他の者たちが意見し、自由闊達に議論する。 そういった方法でないと、世の中はよい方向へ転んでいかないと感じていた。
 「議会議員の経費は、三位一体でなくとも市町村の経営を圧迫している。地域のそれぞれの意見が、行政に反映できればいいのだから、現在の議会にこだわる必要はない。今後は、住民が直接参加する、より住民主体の方向に切り替えるべき」だと。


(次回につづく)

                                     
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