40年前に剣御前まで行きながら登れなかった念願の山・剣岳に登頂する日がやって来た。だ
が、天気予報では台風が接近している。予定を変えようかと悩んだ末の出発となる。
この剣岳行きは一昨年に計画をしたが、腰部脊柱管狭窄症で歩く事すら困難な状態になり断
念をしていた。以前読んだ新田次郎の小説「剣岳点の記」が映画化され脚光を浴びだし、登り
たいという思いは益々高まっていた。
幸いに腰の病は術後の経過も良く山歩きが出来る体に戻っているようなので、封印していた
百名山登山を再開し、2年ぶりの山行きとになる。
前日(7日)の夕方立山ケーブル駅に着き、車中泊。 8日、始発(7:00)に乗り美女平へ。山岳
バスに乗り継いで室堂へ。
1日目と2日目
夜明け前の剣沢小屋(剣山荘から)
早朝4:20に小屋出発。暗闇の中歩き始める。
剣沢を越え、剣山荘に着く。一服剣の方を見る
とチラチラと明かりが見える。既に登っている
人もかなりいるようだ。
雷鳥平
しばらく行くと雷鳥平のテント場
があり、ここを通り今日の登りが
始まる。
みくりが池から望む剣御前の小屋
今日はあの小屋を越えて向こうに下った
ところの剣沢小屋までの予定。ゆっくりと行
きたい。
剣岳から立山
所在地: 富山県
登山日: 2009年9月8日〜10日、 晴れ、 10日はガスと強風
コース: 1日目: 室堂(8:30)→雷鳥平→(11:00)別山乗越(剣御前小屋)→(12:00)剣沢小屋
2日目 (4:20)→剣山荘→(5:30)一服剣→(6:22)前剣→(7:54)剣岳山頂(2999M)
(8:40)→(9:56)前剣→(12:00)剣沢小屋(泊)
3日目 (4:50)→(6:50)別山(2874M)→(7:40)真砂岳(2861M)→富士の折立
(2999M)(8:30)→(9:00)大汝山(3015M)→(9:30)雄山神社(3003M)
雄山(2991.6M)→(10:44)一の越→室堂(12:00)
地獄谷
次に通るのがこの地獄谷。この日は
ガスの濃度が上り危険度が高いと
いうことで警告のアナウンスを流して
いた。
みくりが池
登りは雷鳥平から剣御前を目指す
コースで、最初にみくりが池に出る。
青い池、緑の山、空のブルー、3つが
上手く調和して美しい。この池は立山
火山の水蒸気爆発によって出来た所
に水がたまりできた池。みくりは「御厨」
と表し、神様の食物を調理する所とさ
れていたらしい。奥は剣御前と別山。
室堂から見る立山連峰
バスターミナルを出ると目の前に雄大な
立山の山々がその姿を見せてくれていた。
天気は良し、「さあ、行こう!」という気分。
自然の驚異
まさに地球が煮えたぎっているという
感じ。不気味でもある。
雷鳥平からの立山連峰
剣岳からの帰りはこの山々を右の雄山まで縦走予定。
登攀途中振り返ると雷鳥平と地獄谷
が下にあった。
奥大日岳と雲海
別山乗越に近づき、左方向には
大日岳が雲海に抱かれるように
その姿を見せている。
小屋が見えた、空が青い。
別山乗越からの剣岳
剣沢小屋
沢を下ること約40分で今日の宿・剣沢小屋
に到着。一昨年に新築されたばかりでまだ
木の匂いと温もりがある。ここは水の便も
良くシャワーもあり、なんとトイレは驚くなか
れ水洗なのだ。でも、この汚水などの排水
をどうしているのだろうか?バイオトイレだ
と思っていたので。
食事も豪華で山の小屋であまり居心地が良
くなるのもどうかと思うけれど。ちなみに
一日目はエビフライで2日目は大きなトンカツ。
夕日の剣岳
小屋の前から素晴らしい剣の
山々が望める。剣山荘を選ばず
この小屋にしたのはこの景色の
為でやはり正解だった。
夜明け前の後立山連峰(一服剣から)
剣山荘から小さな岩場と最初の鎖場
を通り一服剣へ。雲海の向こうに日が
昇り始めている。(2618M)
目の前に立ちはだかる前剣
夜が明け剣の山々が男性的な
姿を見せた。その姿はまるで岩の
砦のよう。剣の名に相応しい風貌だ。
ご来光
鹿島槍ケ岳から登るご来光。自分
より下から日が昇ってくる光景に
感激、言葉もなし。
一服剣と奥は右に剣御前、左に別山
沢の所に剣沢小屋が見える。
ガレ場と大岩
地肌と草が消え、岩ばかりのガレ場
が続く。大岩が現れ鎖場へと次第に
危険地帯に突入。
ガレ場と鎖場を繰り返し登って
行くと目指す剣岳が見えてきた。
もうすぐ前剣だ。
前剣山頂(2813M)(6:28)
前剣からの剣沢
鎖場と鉄の橋
再び大きく降る。山頂を目指すためには
2回下って登らねばならない。
いきなり下りの鎖場、そしてその先には
鉄の橋。更に鎖場が続く。気が抜けない。
鉄の橋を越えて行くのは登りの登山道
で、下りには左側の道を通る。
前剣の門を通過し、少し歩きやすい道が
続く。広場がありその後からは右に平蔵
の谷を見ながら山頂まで最後の難所が
続く。
前剣から山頂の剣岳のコースの右には
平蔵谷という深い谷があり、そこから源
次郎尾根が伸び、その頂に剣岳が聳え
ている。
崖を登る二人
映画「剣岳点の記」で測量隊を案内
したのは宇治長次郎であった。その
時登った雪渓に長次郎谷と命名
された。同時に、佐伯平蔵も源次郎
尾根の反対側にその名を残す。源次
郎尾根も名ガイドの名から。
中央の白くなっているところが登山道。
ひと息ついた所で振り返ると
良くここまで来たものだと感心。
カニの横ばい
平蔵のコルからは登りは崖の右側へ
下りは左と矢印がある。ここが一番の
難所で登りには「たてばい」下りには
「よこばい」と言われている鎖場。それ
それ脚の置き場があるので心配はいら
ない。
きつい横歩きが続く。
全ての難所を抜け出した。この
先には待望の頂が待っている。
剣岳山頂(2999M)
遂に山頂に立つことが出来た。病気をして
以来2年ぶりの百名山の頂だ。感慨無量。
山を諦めかけていた時期もあり、その気持
ちを乗り越えての今回の山行きだった。歩
けない時の苦しさを思い出し、本当によくこ
こまで来たものだと自分を褒めたいと思う。
山頂の祠
明治47年7月13日陸地測量隊が三角点
を設置すべく頂上に達した時に、人跡未
踏と思われていた山頂に槍の穂と錫杖
(しゃくじょう)の頭を発見した。これは唐
時代の物であろうとの鑑定が学者によっ
てなされたと言われている。そんな劇的
な史実を持つ山。
剣岳山頂からの大パノラマ・後立山連峰
360度の展望があり、立山や大日岳、更には富山市街や能登半島まで
望めるようだ。これらの素晴らしい大パノラマに感激。
別山から立山
八峰の頭
唐松岳(後立山連峰)から望む剣岳(右)と立山連峰
2年前の10月に唐松岳から五竜岳を目指したときの剣岳の姿。
山頂で30分余り景色しを満喫した後、下山開始。同じ道を戻る。一服剣辺りからガスが現れた。
そして山頂に向って吹き上げている。やはり山は午前中にそれも出来れば早い時間に立つべき
と今更ながら感じた。下りは無理をせず休みながら降りる。特に、鎖場などは下る時が危ない。
「小屋が見えたときに、ホッとして足を踏みはずして滑落する事故が多発している」と小屋のひ
とから注意するように言われていた。無事に剣沢小屋に着き、大仕事をしたという成就感があっ
た。3日目続く。