下りきったからには次は登りである。
ひたすら登り日本庭園付近で振り返って
見ると遠くには槍ケ岳、その前の稜線
上には昨夜お世話になった宿三俣山荘
がちょこんと乗っかっている。その手前が
大きく落ち込んで谷になっていた。よくも
まああそこまで下りまたここまで登って来
たものだと我ながら感心をすばかりで
あった。
雲ノ平からはコロナ屋根を通り
高天原峠へと出た。あとは温泉
目指して下る事になる。くだりに
つれて暑くなってきた。風も無く
汗が吹き出る。ひたすら温泉に
つかりたい一心で歩き続ける。
まもなくして高天原山荘到着。
早速ザックをおいて温泉を目指す。
3日目にしてやっと入れた温泉で
ある。誰もいない、この大自然の
中の温泉を独り占め。何と言う贅沢
な事か。まさに山上の楽園である。
この山荘を3日目の宿とする。
山上の楽園・雲ノ平から
高天原温泉への一人山旅
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1999年8月17日〜22日
4日目の山荘は再び三俣山荘にした。行きの時のあの
ビールの味が忘れられなくそれを求めて行くことにした。
ここからは往路と同じコースで帰ることにする。山荘を
出て三俣蓮華岳辺りから雨に見舞われやむ気配も
無く無理をしないで5日目の宿を鏡平山荘にとる。
6日目は再び快晴となり、この山旅の最後の日はとても
爽やかな気分で新穂高温泉まで歩けた。途中若い女性
と一緒になりわさび平小屋でコーヒーを飲みながら山の
話などをしあと登山口まで一緒に歩く。
そして最後に新穂高温泉に入り6日間の山の疲れを癒す。
新穂高温泉→わさび平小屋→鏡平山荘(泊)→弓折岳分岐→双六小屋→双六岳→丸山→三俣蓮華
岳→三俣山荘(2泊目)→黒部源流→日本庭園→祖父庭園→スイス庭園→雲ノ 平→高天原峠→高
天原山荘(3泊目)〜高天原温泉→岩苔乗越→ワリモ岳→鷲羽岳(百名山)→三俣山荘(4泊目)→
双六小屋→鏡平山荘(5泊目)→わさび平小屋→新穂高温泉
温泉に入り目的を果たしたあとここからは帰りの山歩きと
なる。マイカー登山の為出発点に帰らねばならないので
ある。
帰路は別のルートを取ろうと考えた。それは山荘から水
晶池を通り岩苔乗越へ出て
ワリモ岳を経由してもう一つ山・鷲羽岳の上に立つルート
である。
←
三俣山荘からは下りが始まる。黒部の源流の
地を確かめておきたいからである。山に来て道が
下り始めるといつも思うのである「せっかくこん
な苦労して登ったのに下るなんてああもったい
ないな」と。とにかく下りきってみるとあった!うっ
かりすると見落としそうなところに碑が建っていた。
あの黒部川がここから始まっているのだと思うとす
こし感動はしたが、しかし不思議である。この碑の
所には水など無いのである。多分この下の地層から
水が湧き出てそれが集まり小川となり更に黒部川と
大きくなっていくのだろう。地図で確かめて見るとそ
のようになっていたので安心した。
標高2860.3Mの山腹の広い山
鏡平山荘からは弓折岳分岐まで少しきつい登りがあり、そこから
は双六小屋まで緩やかな登りが続く。小屋手前のテント場からは
色とりどりのテントが目に入ってきた。小屋を通過して双六岳まで
一気に行く。山頂は広くどこが一番高いところかは標識がなけれ
ば到底見つからないようだ。しかし展望は本当に素晴らしく360度
見渡せる。快晴に恵まれ槍、穂高連峰が見事にその姿を見せてく
れていた。更に左の方には鷲羽岳や水晶岳なども見渡せた。
前々から行って見たいと思っていた山の奥に有る温泉・高天原温泉への単独行である。新穂高温泉か
ら入る予定だが地図で見ても随分と奥まったところにあり3日がかりでやっと行けそうな場所だ。まあ
ゆっくりとマイペースで行く事にしよう。
8月16日夜愛車パジェロで新穂高温泉へ向けて出発。山行きは大抵車で深夜運転で登山口に明け
方近く着きそこで少し仮眠をすることにしている。
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元来単独行と言うのは自由奔放
な旅であり人と交わりたくなければしなくてよし、
話したくなれば一人旅の人を見つけて話しかけ
ればよいのであるが、実際山小屋などでは大抵
一人の者同士がいつのまにやら集まり山の話な
どする。私もそのうちの一人になる事が多い。お
互いに自分が登った山の情報を教えあったりし
て話に花が咲くのである。
川から離れて少し登ると小池新道に出る。すこし
づつ登って行くが夏の太陽がまだきつくとても
暑い。シシウドヶ原を越えて更に進むと鏡平に出
た。山荘の手前に池がありここからの槍や穂高
連峰の眺めは素晴らしく絶好の展望地である。
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双六岳山頂からの穂高連峰の大パノラマ(中ほどの尖がっているのが槍ケ岳)
双六岳から笠ヶ岳
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→
わさび平小屋までは川沿いに
緩やかな登りの左俣林道を行く。
→
良く考えてみると黒部源流あたりから誰とも出会って
いないようだ。日本庭園ぐらいから雲ノ平へ行くまで
前を見ても後ろを見ても誰もいない。少し人恋しくな
ってきているようだ。山で人に会えば挨拶をしあうと
いう気持ちが自然と出てくるのはこんな気持ちから
なのだろうと思った。
鷲羽岳(百名山 2924.2M)
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雲ノ平に敷かれた木道
槍ケ岳と日の出
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双六岳よりの槍ケ岳
双六岳より左は三俣蓮華岳、右は鷲羽岳、
その奥は水晶岳
三俣蓮華岳 |
双六からの景色に十分満足し次山を目指す。ここからは楽な山歩きで1時間も歩かないうちに丸山(2854M)を越え三俣蓮華岳(2841.2M)に着く。昼過ぎの太陽はこんな山の上でも結構暑くかなりの汗をかく。山頂から少し下って三俣山荘に着くやいなや一杯1000円の生ビールをぐいとやる。このビールのうまかった事は今でも忘れられない。2泊目はこの山荘に泊まる事にした。小屋は新しくなく昔の山小屋であった。翌朝出発する時に驚いた事があった。それは80歳に近いと思われるおばあさんが単独行をして出かけようとしていたのだ。負けて入られないと私の気持ちが高ぶってきた事を覚えている。
三俣蓮華岳にて