● Temptation  ●

2枚目にして最高傑作!の呼び名が高いこのアルバムは、4ビートから16ビートまで、 バラエティに富んだロッカー政樹の世界が堪能できる1枚です。
今回はアレンジャーに松原正樹、馬飼野康二、井上鑑の3名を迎え、 1枚のアルバムの中で前半5曲と後半5曲(LP盤ではA面とB面)それぞれの魅力を楽しめる構成に なっています。
ビートの効いた激しいロックから、しっとりとしたバラード、気だるい気分が漂う ムーディーな曲まで、「テンプテーション(誘惑)」のアルバムタイトルが現すとおり、シンガーソングライター京本が 織り成す、様々な色に誘惑されっぱなしの10曲が詰まっています。
また、このアルバムは、音楽業界では有名なfreedom studioにて レコーディングされました。ちなみに当時、丁度ブレイクしていたアルフィー(当時)もこのスタジオを 愛用をしていたご縁で、彼らの『THE RENAISSANCE』とこのアルバムは、同じエンジニアの方が手がけられています。

簡単に各曲を紹介すると。
オープニングは、夏を思わせる軽快なサウンドと掛け合い的なコーラスが心地よい「スターダスト・ハイウェイ」。
そして、A面一押し曲。マイナーコードに乗せた重めのビートと、随所に効果的に入れられるフィル・インがたまらなくカッコよく、 聴き終えたその瞬間に、”あいきゃんれっちゅーごー”と思わず叫びたくなる ロッカー政樹炸裂な1曲「たったひとつのLove -I Can't Let You Go-」。

一転して跳ねるリズムと、すくい上げるような歌い方が愛らしい「I'm In Blue」では、 1曲目同様ノアさんとの息の合ったコーラスも聴きどころです。
恋の終わりを80年代らしいきらびやかな8ビートに乗せ、さらりと描いた名曲「冬の迷路」から今度は同じ 別れの曲でも、ストリングスやピアノを加え、しっとりと聴かせるバラード「潮騒に…」。


後半は、井上鑑氏とのコラボレーションがたっぷり楽しめる5曲がズラリ。
井上氏のアレンジといえば、個人的にリズム隊の斬新さと変幻自在なキーボード(ピアノ)、が大好きなのですが、 このアルバムでもそれが余すところ無く発揮されています。

昔も今もファンの間でも人気が高い「LADY」では、重い4ビートのゴツゴツ感と、♪LADY 恋はゲーム〜 という泣きのメロディーの色っぽさの 対比がたまりません。また、思わずコピーしてみたいっ!と思わせる間奏部のギターのカッコよさも必聴です。
大人のポップス、という言葉がピタリとくる感の「たどりつけないレインボー」。

個人的にこのアルバム1押し曲で ある「オータム・ラブ」では、凝ったメロディーラインの妙がたまりません。冒頭から気だるい雰囲気で酔わせておきながら、 Bメロ後半では字余り的なフレーズから、一気に♪オータム・ラブのサビへとなだれ込むに展開には、嵌りながらも思わず 上手いっ!と唸ってしまいます。
そして、8曲目同様、凝ったフレージングながら、今度は歌謡ロックの王道的な メロディーラインと、サビの字余り的なフレーズがとにかくクセになる「じらされて…今夜」。ノリまくった歌そのものはもちろん、密かにかなり凝っているベースラインと、♪もういない から ♪髪を切った へと移る瞬間の お約束的なドラム進行の楽しさは、一度嵌るが最後、もう抜け出せません!
最後は、どこか甘い香りが漂うミディアム・ポップス「Take Me Away」。サビの素直なメロディーラインがしっとりと、ちょっぴり不思議なバックの コード進行とともに耳に残ります。

1スターダスト・ハイウェイ
2たったひとつのLove -I Can't Let You Go-
3I'm In Blue
4冬の迷路
5潮騒に..
6Lady
7たどりつけないレインボー
8オータム・ラブ
9じらされて..今夜
10Take Me Away

作詞作曲:京本政樹 編曲:1〜3:松原正樹/4.5:馬飼野康二/6〜10:井上鑑

1984年10月21日

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