● 少年たちの夜  ●

ビクターインビテーションからポリドールへ、移籍後第一弾。
「太陽のかけら」とのアルバム2枚同時リリース(!)という、 その迸る創作欲を象徴するかのように、このアルバムでは多彩な曲調はもちろん、ボーカリストとしても 新たな挑戦が窺える意欲作です。
今回はアレンジャーに岩本正樹、船山基紀両氏を迎え、デジタルサウンドを多用したロックテイストが濃い、ご機嫌なナンバーがズラリ。
全体的にハードで凝ったアレンジの岩本作品の間に、一息いれるかのようなタイミングで挟まれる船山作品、というバランスの良さが 絶妙な完成度の高いアルバムです。


幻想的な幕開けから一転、ちょっぴり懐かしいメロディーに乗せた♪お前が欲しい 俺の女になれ、というストレートな歌詞に 思わずドキリ、とさせられる「So Please」。
エフェクターをガンガンに効かせたツインギターにドラムスが絡むご機嫌なイントロに、かなり激しいナンバーと思いきや、 ♪壊れた鏡に とするりと捻ってくれるのが嬉しい「香りが消えた夜」。♪綺麗な感じのキスも サビの素直でキャッチーなメロディーにちょっぴり弾んだボーカルとコーラス、激しいギターの絡みが とにかく気持ちよく、かなりクセになる1曲です。

シングル、「太陽のかけら」に収録バージョンとも違った、シンセサイザーを多用した明るく軽いアレンジに、けだるく色っぽい ボーカルが切ない「風のセーラ −illusion−」。
優しいメロディーと柔らかなボーカルが耳にすっと馴染む「I can't tell you why〜言いだせなくて〜」。掛け合いのような 女性コーラスとの妙が心地よい、どこかほっとさせられるナンバー。

京本さんにはかなり珍しい、明るく楽しい曲調の「BLUE LADY」。いつになく可愛い声のボーカルにデジタルサウンドのピコピコ感が バッチリかみ合った1曲。
ちょっと不思議なメロディーにレベッカ風のアレンジが絶妙な「欲しがりのウィドウ」。タイトルの通りワガママな未亡人に 翻弄される男心を、カラッと楽しく歌い上げます。マイナーコードからメジャーコードへさりげなく、自然に移行する Aメロには思わずニンマリ。サビの♪AH 溜息のシャドウ 元気いっぱいなボーカルが、♪あなた woo〜とファルセットに変わる楽しさは、 一度覚えるともう抜けられません。

しっとりとお洒落で大人びた雰囲気の「フライトナンバー62」。前曲から一転、今度はゆったりと力を抜いた、やや語りかけるようなボーカルが、最後の♪フライトナンバー62 で 柔らかく伸びのある声に変わるのも密かな聴きどころです。
個人的このアルバムイチオシ曲「二人が星屑」。凝ったベース、ギターのフレーズはもちろん、♪触れた指を からめてる といきなり5度も上がるメロディーラインの不思議さが カッコよく、膝でというよりは、腰でリズムを取り出したくなるハードなナンバー。やや投げつけるようなシャウト気味なボーカルと合わせて、かなり異色なロッカー政樹が楽しめる1曲です。

壮大な調べに乗せて、深い愛を歌い上げる感動の1曲「星影の関係(リエゾン)」。まさにアルバムのラストを飾るにふさわしい、力強く情感たっぷりの歌声を是非、堪能してください。

1So Please
2香りが消えた夜
3風のセーラ −illusion−
4I can't tell you why〜言いだせなくて〜
5BLUE LADY
6欲しがりのウィドウ
7フライトナンバー62
8二人が星屑
9星影の関係

作詞作曲:京本政樹 編曲:1.4〜7.9.10:大谷和夫/2.3.8:藤崎良

1987年11月1日

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