春に発売された『苦悩〜peine〜』のラストにボーナストラック的に収録された『薄桜記』。京本さんご自身も10年に一度
あるかないかの名曲、と自負するとおり美しく耳に残らずにはいられないメロディーと叙情的な歌詞が発売直後からファンのみならず、京本さんの周囲でも評判を呼び、シングルカットされることになりました。
前回のモノクロピクチャーに引き続き、今回は桜を思わせる鮮やかな桃色のカラーCDに桜の花びらが舞う、とても綺麗なCD盤に
加え、初回限定版には豪華カレンダー付、とソフト、ハードの両面からファンへの嬉しいプレゼント的な1枚です。
『薄桜記(さくらうた)』
同じ旋律でありながら、アレンジを変えることにより見事に新しい曲に生まれ変わった「薄桜記」。
アルバムバージョンとの違いは、華やかな軽やかさ、これではないでしょうか。
まずは簡単にアルバムとのアレンジの違いを挙げてみると。
カデンツァ風な生ピアノのイントロからストリングスのハーモニーに乗り、♪何故に〜何〜故に〜 といきなりのサビ始まりで、
(アルバムと)おっ違うと思う耳に更にアルバムではヴァイオリン1本だったお馴染みのフレーズが、本数を重ねることにより
厚みと華やかさを感じさせます。要所要所でのアルペジオ以外は一転して裏方に徹したアコースティックギターが
敷きつめた音のじゅうたんの上で奏でられるピアノの旋律とドラムスのブラシ奏法が、しっとりした中に軽やかさを加え、
柔らかだけれど軽快な印象を与えてくれます。
また、一方では2番に入る直前や最後のサビのリフレインで多用されるストリングスのポルタメント(高さの異なる2つの音を
つなげて弾く奏法。わかりづらくてすみません)などゆったりとした部分はより滑らかに聴こえるように演奏されている点にも注目です。
同じく2番のサビに入る前のストリングスのフレーズが、レミファ(#)ソラとノーマルな8分音階からレド(#)レミレミファ(#)ミファ(#)ソファ(#)ソラソラシラシレシレ(注:表記は全て実音)と3連展開つきの音階へとリアレンジされたことにより、
うわっと盛り上がってサビの要氏とのコーラスにつながる心地よさが味わえます。
個人的には、2番に入る直前のアコースティックギターの一見不思議なコードのフレーズが、短いけれどとても印象的な音感でお気に入りです。
つい、バックのことばかり書いてしまいましたが(汗)、一段とメリハリの効いたバックに乗り、より情感たっぷりに歌い上げる
京本さんの柔らかで艶やかな歌声(特にビブラートのかけ具合と♪毎年この時期になると〜の”まい”や♪振り返る日々〜の”ふり”など特にフレーズの出だしなどで魅せる枯れ具合がたまりません)に酔いしれること必至です。
季節や気分により、アルバム、シングルと聴き分けて楽しむことも出来るのも嬉しい、本当に長く聴き続けたい1曲です。
『身勝手なkiss〜最初から泣いていた〜』
何とも刺激的なタイトルから、激しいアップテンポな曲調を想像していたら、、クラップフィンガーとドラムスにキーボードの
バッキングという一見ブルージーなクラブサウンドを思わせるイントロに驚く間もなく、♪ここで 抱かれながら〜 と色っぽすぎる
京本さんの歌声に度肝を抜かれる1曲。
Bメロ以外は、一環して同じビートを刻み続けるリズム隊の上で、これでもかというくらい、フェロモン全開な歌声で嫉妬心むき出しの
エゴ心を歌い上げる表現力の豊かさにはただただ脱帽。変な意味でなくても、この曲を聴いている時の顔を他人に見られるのは
かなり気恥ずかしくなるほど。まさに京本さんならでは、京本さんにしか歌えない1曲です。
また、ラストのギターのフレーズは京本さん本人によるもの。シンプルな中に味のある音色を披露しており、こちらも必聴です。
『薄桜記(さくらうた)〜ピアノヴァージョン〜』
1曲目と同じイントロに、歌の部分がピアノに変わっただけかと思いきや、細かな部分で更にリアレンジされ、メインのピアノの
最小限に抑えられたと思われる装飾が、却ってメロディー本来が持つ美しさ、耳馴染みのをよさを実感させてくれます。
2フレーズ目からさりげなく入れられている、リム・ショットがちょっとしたアクセントになっているのも聞き逃せません。
個人的にラストの弦楽四重奏ならでは、の響きを生かしたハーモーニーに加えられたアコースティックギターのさじ加減の
良さが生む余韻、には何度聴いてもうっとりさせられてしまいます。
1 | 薄桜記(さくらうた) |
2 | 身勝手なkiss〜最初から泣いていた〜 |
3 | 薄桜記(さくらうた)〜ピアノヴァージョン〜 |
4 | 薄桜記(さくらうた)〜インストゥルメンタル〜 |
5 | 身勝手なkiss〜最初から泣いていた〜〜インストゥルメンタル〜 |
作詞作曲:京本政樹 編曲:大谷和夫 コーラス:根本 要(1のみ)