テレビ東京系で昨秋から放送開始以来、これまでの特撮の常識を覆す斬新かつ美しい映像と凝ったストーリー展開が目を惹く『牙狼(GARO)』。その新・旧主題歌2曲を収録したシングル。
近年は大手プロダクションとの提携により、フジ、日テレ、TBS等の在京大手各局の番組主題歌といえば、
プロダクション所属の人気・有名ミュージシャンにほぼ限定されている中、番組出演俳優であり、また知る人ぞ知るミュージシャン的存在の京本さんが手がけたことは一種の快挙と言えるでしょう。
『優しい言葉』との2枚同時発売、親友・杉本 彩さんの協力を得て実現した2枚で1つの絵画のようなジャケット、更には昨秋発売されたアルバム『僕が愛を伝えてゆく』この3枚の背表紙を並べて見ると
、、なんとも綺麗な桜の花びら風ハートモチーフのグラデーションとなるデザイン等、目と耳の両方に京本さんらしいこだわりが溢れています。
また、特撮・ドラマファンの為には牙狼カードの封入、とこちらにも京本さんらしすぎる細やかな心遣いが窺える1枚です。
『僕はまだ恋をしてはいけない』
初代主題歌『僕が愛を伝えてゆく』がタイトル通り、(たとえ何が起ころうとも)”僕が愛を伝えてゆく”という強い普遍的なメッセージを
扱った作品なのに対し、今回はドラマの進行に伴う主人公達の心の葛藤を描いた1曲。
僕はまだ恋をしてはいけない、というどうしようもなく惹かれる気持ちを律しなければならない心境を反映したかのような、
冒頭の♪レソドレ〜 とエレクトリック・ピアノが奏でる旋律に象徴される曲全体に漂う危ういバランス感が不思議な魅力を醸し出しています。
『僕が〜』に比べかなり楽器そのものの色を抑えた打ち込みの無機質とも言えるサウンドに、京本さん得意の泣き、すすり泣きと表現したくなる枯れの入った歌声が映え、より切ない気持ちに
させられます。
また、この曲ではNOAさんのコーラスがこれまでの楽曲とは一味違う使われ方をしているのも特徴です。特にBメロ後半から合いの手的に入ってくるコーラスが、サビの2フレーズ目の
♪僕はまだ〜(京) ♪僕は〜FOO WOO(ノア) の部分で炸裂し合う
アンサンブルの美しさは圧巻。
全体的にキーが高いため、ファルセットに近い高音ボイスがたっぷり聴ける点も個人的には嬉しいポイントです。
『牙狼(GARO)〜僕が愛を伝えてゆく〜』
リマスタリング・バージョンとなった今作では、アルバムでは
サウンド全体にヴェールのようにかけられていたエコーが抑えられ、全体的にかなりタイトな印象になっています。
エコー同様、ドラムス(シモンズ)や実は密かに相当豪華に取り入れられていたパーカッション群をここぞというタメの部分以外は最小限に抑え、緻密なサウンドの絨毯の上にヴォーカルと鍵盤・弦系のメロディーを浮かび上がらせたことにより、
すっきりとより聴きやすく、旋律そのものの良さが際立ちます。
一例をあげると、♪僕が愛を伝えてゆく と1番が終わった後にチッチッチッとカバサ(だと思いますが、違っていたらすみません)が
印象的に入れられていたのですが、シングルでは全体のボリュームがやや抑え気味なのもあってか、微かに聞こえる程度になっています。
また、カチカチッときっちり拍に嵌ったヴォーカルでありながら、楽曲自体がどっしりとした温かみのあるサウンドのため、1曲目の危うい繊細さと好対照な安らぎを感じさせてくれます。
ドラマのエンディングで流れていたバージョンは、ラストのピアノがより開放的なアレンジになっていましたが、この曲がとにかく大大大好きな身としては、ドラマバージョンのCD化も
いつか期待したいものです。
1 | 僕はまだ恋をしてはいけない |
2 | 牙狼(GARO)〜僕が愛を伝えてゆく〜 |
3 | 僕はまだ恋をしてはいけない〜インストゥルメンタル〜 |
4 | 牙狼(GARO)〜僕が愛を伝えてゆく〜〜インストゥルメンタル〜 |
作詞作曲:京本政樹 編曲:山本はるきち