● LOVE IS ALL  ●

『一億の恋』以来、実に10年ぶりのオリジナルアルバム。前作では様々な作家の方が作られた楽曲を歌う、ということにチャレンジしましたが、今作でも約半数を小川紅彦氏(堀口ノア氏の別ネーム)が担当。
全篇打ち込みによるアレンジが全体的にライトな印象を与え、軽快なポップスからストリングスを多用した 壮大なバラードまで、様々な愛の形を綴った、良質な大人のポップスがたっぷり。
特に、長年パートナーを組んできたノアさんの手による、シンガー京本の美味しい部分を 活かした楽曲の数々は、新しい魅力を再発見させてくれました。

ちなみにタイトルのlove is all、京本さん以外にも多くの日本人アーティストの同名曲があり、 THE BEATLESの名曲『all you need is love』と同じく”愛こそすべて”、と訳したいところですが、 実はこれは典型的なジャパニーズイングリッシュ。 love is everything、もしくはlove is just allの方が英語としては自然な形になります^^ゞ。

当時、インディーズ扱いということもあり、トーク番組やイベントなどに出演の際に控えめな 宣伝に留まり、また、地方によっては注文に応じてもらえない事態が発生したり、と ちょっぴり不遇なアルバムですが、聴き心地の良さは抜群。季節を問わず楽しめる1枚です。


マイナーコードのアップビートに、ドラマのワンシーンのようなストーリーが 映えるご機嫌なナンバー。個人的にイチオシ、是非とも生で聴きたい1曲「マリア」。歌謡曲色が濃くこれまでにない楽曲ですが、サビ直前の♪詰まらない恋なんか などに見られる甘く引っ掛けておいて、すっと抜く歌声がたまらなく、一度嵌るとかなり病みつきに。

愛しい人への思いをストレートに綴った「愛があれば輝ける」。マイナーと見せかけてメジャーに 転ずるコード進行が楽しく、また要所要所で見られるノアさんとのコーラスも必聴。

「もうどこにも君の愛はない」友人であるTHE BEGINへと書き下ろしたナンバーのセルフカバー。ボサノバ調の軽く優しいメロディーと柔らかな歌声が織り成すハーモニーが心地よく、ゆったりとした気分に浸れる1曲。ラストの♪切な過ぎて〜とクレッシェンド しておいてビブラートをかけながら♪I miss you と退いていく部分に思わずほうっとさせられます。

友人であるはずの彼女への恋情を綴った「友愛〜抱き寄せてもいいのか〜」。 ボンゴのリズムに乗せたアコーディオンの響きが独特の哀愁を漂わせ、同じボサノバでも前曲とはひと味違った艶を感じさせます。 間奏のややブルースがかったアコースティックギターソロがとにかくお洒落。

全10曲中唯一メジャーコードなナンバーの表題曲「LOVE IS ALL」。全体的に弾んだメロディーと歌声がどこか懐かしく、 80年代アイドルポップスを彷彿させます。

先に発売されたシングルとしてはもちろん、アルバムの中に入れられると、改めて 楽曲としての完成度の高さが際立つ「まるで悲しみが雨のように口づける」。印象的なイントロが流れた瞬間のワクワク感は 何度味わってもたまりません。

『虚飾のカサノバ』からのりアレンジとなった「How much I love you」。サックス主体からギター・ベース+キーボード に変え、よりしっとりとした雰囲気に。キーは同じなのに、今回の方が低い印象を与えるところに、アレンジの妙と 確実に年月を重ねた歌声の移り変わりを感じさせます。

京本さんとはひと味違った素直なメロディーラインが美しい「MY GENTLE LOVER」GENTLEの言葉通り、 全体的に優しい想いが溢れる、けれどもどこか力強さも感じさせる1曲。

「まるで〜」との両A面として発売された「かげろうの街U」。楽曲のよさはもちろん、様々な角度から ギターアレンジの楽しさが味わえる1曲。特にAメロのバックで隠し味的に入れられたアコースティックギターの アルペジオが、ハープのような響きを奏でているのにはびっくり&注目です。

ラストを飾るバラード「旅路」。ゆったりとしたメロディーにストリングスにフルート、パーカッションを 加えたアレンジは、まさにラストを飾るにふさわしく、一語一語噛み締めるように、サビでは朗々と歌い上げられる歌詞の深さに、 思わず人生を振り返ってしまう1曲です。

1マリア
2愛があれば輝ける
3もうどこにも君の愛はない
4友愛〜抱き寄せてもいいのか〜
5LOVE IS ALL
6まるで悲しみが雨のように口づける
7How much I love you
8MY GENTLE LOVER
9かげろうの街U
10旅路

作詞:1〜7.9.10:京本政樹/2.10:小川紅彦 
作曲:4.7.9.10:京本政樹/1.2.4〜6.9:小川紅彦  8.作詞作曲:堀口ノア

1998年12月23日

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