『一億の恋』以来、実に10年ぶりのオリジナルアルバム。前作では様々な作家の方が作られた楽曲を歌う、ということにチャレンジしましたが、今作でも約半数を小川紅彦氏(堀口ノア氏の別ネーム)が担当。
全篇打ち込みによるアレンジが全体的にライトな印象を与え、軽快なポップスからストリングスを多用した
壮大なバラードまで、様々な愛の形を綴った、良質な大人のポップスがたっぷり。
特に、長年パートナーを組んできたノアさんの手による、シンガー京本の美味しい部分を
活かした楽曲の数々は、新しい魅力を再発見させてくれました。
ちなみにタイトルのlove is all、京本さん以外にも多くの日本人アーティストの同名曲があり、
THE BEATLESの名曲『all you need is love』と同じく”愛こそすべて”、と訳したいところですが、
実はこれは典型的なジャパニーズイングリッシュ。
love is everything、もしくはlove is just allの方が英語としては自然な形になります^^ゞ。
当時、インディーズ扱いということもあり、トーク番組やイベントなどに出演の際に控えめな
宣伝に留まり、また、地方によっては注文に応じてもらえない事態が発生したり、と
ちょっぴり不遇なアルバムですが、聴き心地の良さは抜群。季節を問わず楽しめる1枚です。
マイナーコードのアップビートに、ドラマのワンシーンのようなストーリーが
映えるご機嫌なナンバー。個人的にイチオシ、是非とも生で聴きたい1曲「マリア」。歌謡曲色が濃くこれまでにない楽曲ですが、サビ直前の♪詰まらない恋なんか などに見られる甘く引っ掛けておいて、すっと抜く歌声がたまらなく、一度嵌るとかなり病みつきに。
愛しい人への思いをストレートに綴った「愛があれば輝ける」。マイナーと見せかけてメジャーに
転ずるコード進行が楽しく、また要所要所で見られるノアさんとのコーラスも必聴。
「もうどこにも君の愛はない」友人であるTHE BEGINへと書き下ろしたナンバーのセルフカバー。ボサノバ調の軽く優しいメロディーと柔らかな歌声が織り成すハーモニーが心地よく、ゆったりとした気分に浸れる1曲。ラストの♪切な過ぎて〜とクレッシェンド
しておいてビブラートをかけながら♪I miss you と退いていく部分に思わずほうっとさせられます。
友人であるはずの彼女への恋情を綴った「友愛〜抱き寄せてもいいのか〜」。
ボンゴのリズムに乗せたアコーディオンの響きが独特の哀愁を漂わせ、同じボサノバでも前曲とはひと味違った艶を感じさせます。
間奏のややブルースがかったアコースティックギターソロがとにかくお洒落。
全10曲中唯一メジャーコードなナンバーの表題曲「LOVE IS ALL」。全体的に弾んだメロディーと歌声がどこか懐かしく、
80年代アイドルポップスを彷彿させます。
先に発売されたシングルとしてはもちろん、アルバムの中に入れられると、改めて
楽曲としての完成度の高さが際立つ「まるで悲しみが雨のように口づける」。印象的なイントロが流れた瞬間のワクワク感は
何度味わってもたまりません。
『虚飾のカサノバ』からのりアレンジとなった「How much I love you」。サックス主体からギター・ベース+キーボード
に変え、よりしっとりとした雰囲気に。キーは同じなのに、今回の方が低い印象を与えるところに、アレンジの妙と
確実に年月を重ねた歌声の移り変わりを感じさせます。
京本さんとはひと味違った素直なメロディーラインが美しい「MY GENTLE LOVER」GENTLEの言葉通り、
全体的に優しい想いが溢れる、けれどもどこか力強さも感じさせる1曲。
「まるで〜」との両A面として発売された「かげろうの街U」。楽曲のよさはもちろん、様々な角度から
ギターアレンジの楽しさが味わえる1曲。特にAメロのバックで隠し味的に入れられたアコースティックギターの
アルペジオが、ハープのような響きを奏でているのにはびっくり&注目です。
ラストを飾るバラード「旅路」。ゆったりとしたメロディーにストリングスにフルート、パーカッションを
加えたアレンジは、まさにラストを飾るにふさわしく、一語一語噛み締めるように、サビでは朗々と歌い上げられる歌詞の深さに、
思わず人生を振り返ってしまう1曲です。
1 | マリア |
2 | 愛があれば輝ける |
3 | もうどこにも君の愛はない |
4 | 友愛〜抱き寄せてもいいのか〜 |
5 | LOVE IS ALL |
6 | まるで悲しみが雨のように口づける |
7 | How much I love you |
8 | MY GENTLE LOVER |
9 | かげろうの街U |
10 | 旅路 |
作詞:1〜7.9.10:京本政樹/2.10:小川紅彦
作曲:4.7.9.10:京本政樹/1.2.4〜6.9:小川紅彦
8.作詞作曲:堀口ノア