● 京本政樹クリスマスディナーショー in 東京全日空ホテル 2004.12.25  ●

エッセイ、CD発売、ライブハウスでの16年ぶりのライブ、写真集、シングル発売とイベント尽くしだったこの1年。その最後を締めくくるクリスマス・ディナーショー。
ライブなら、今までそれこそ数え切れないくらい参加したけれど、ディナーショーは全くの初体験。内容への期待はもちろん、ギリギリまで友人たちと「何を着て行ったらいいの?」と悩んだりしながら、指折り数えて待ったクリスマス。
まるで遠足に向かう子供のように、前日はドキドキ緊張してロクに眠れませんでした。

せっかくのディナーショーなんだから、今日は思いっきりメイクしてみよう!、というわけでまずは宿泊先のホテルに友人達と集まりメイク大会。 わーわーきゃーきゃー言いながら、出来上がったあまりにもいつもと違う顔に照れるやら可笑しいやら。 それぞれが身支度を終え、いよいよ今日の会場である東京全日空ホテルへ。
タクシーを降り立った瞬間、豪華な佇まいに、うわー流石大都会のど真ん中のホテルは違うなーと早くも感動。何より回転扉の大きさにはビックリでした。だって、一度に4人くらい入れるんですよ!!
巨大なクリスマスツリーの輝きに目を奪われながら、地下の会場に行くと既に開場を待つ着飾った人の姿が見受けられました。

楽しく談笑しながら、待つことしばし。遂に今夜の会場に入る時がやってきました。
うわー楽しみだね、なんて言いながら場内に一歩足を踏み入れて、まずその広さと並べられたテーブルの数にびっくり。前方に目を向ければ、思ったより遥かに広いステージの上に楽器が置かれ、スタッフの方が慌しく 準備をされていました。


ショーの開始の前に、まずは皆さんでディナーを頂きます。メニューに書かれた舌を噛みそうな名前の料理の数々に、「これってどんな味なの?」「想像つかないよー」、なんて話していたのですが、次々と出される料理とお酒はどれもとっても美味しかったです。熱いものは熱く、冷たいものは冷たく、という一見当たり前に見えて、実は意外と実践されないことが多い ことがきっちり出来ていることに感動でした。どれも美味しかったのですが、個人的に魚料理と肉料理の間のお口直しに出された、”レモンのシャーベット”の美味しさは忘れられません。

楽しい食事の時間もデザートが出る頃になると、あちこちで皆様そわそわしだします。お化粧直しに走る人、最後の最後までしっかり料理を味わう人、ぐるりと見回してみると広い部屋の奥まで、思い思いに着飾った人々で埋め尽くされていました。
そろそろかな…と思う間もなく、突然場内の明かりが消え、仄かに青い照明が照らす中、バンドメンバーが入場してきます。その後ろから見えるのは・・・と思った途端、
♪ぱらぱ〜 というお馴染みのテーマが鳴り響きます。どよめきにも似た歓声が上がる中、パッとステージに明かりが灯り、ステージ中央に立つ京本さんの姿が!


あの通称・金魚ちゃんの赤と黒の着物を羽織り、侍ギターを抱え歌いだしたのは、なんと『荒野の果てに』
まさか、この曲が来ようとはっ!しかも、竜の衣装でなんて誰が想像したでしょうか。胸元に大きなシルバーのネックレスを輝かせ、すっきりと横髪をアップさせた左の耳と指には綺麗な青い宝石の光が煌き、 アイリッシュグリーンの瞳が眩しい姿は、どう見ても現在の京本さんなのに、思いはいきなり18年前にタイムスリップ状態(><)。

夏の時と同じく京本さんの左手側、椅子に腰掛けたノアさんが、ニコニコと客席を見渡しながらするのにつられたように、自然と沸き起こる手拍子。
♪広い荒野の果てに〜 うわーんこれで幕開けなんてずるいよ〜ありがと〜!のびのびと声がすっごく出てる(><)。か、髪型がっカ、カッコイイ!!、イヤリングと指輪がお揃いで綺麗〜と感動する ことのあまりの多さに、手拍子するのを忘れるほど。曲が終わった瞬間、パッと両肩に羽織っていた竜の衣装を脱ぎ捨てる姿が、一段と鮮やかに決まってました。

全く予期せぬオープニングの興奮冷めやらぬ中、ざわつく場内の隙間を縫うように聞えてきたのは、これまたまさかの『ひと夜花』
♪一度だけ抱いてくれた〜 京本さんらしいしっとりとした、哀愁を帯びたメロディーが心地よく、バックに浮かぶ月夜の背景がより一層、時代劇気分を盛り立てます。
♪風が揺れて 心揺れて と歌いながら、顔の辺りから横に優雅に振った右手に嵌められた紫の手袋が、色こそ違えど竜を思い起こさせてまた感動。
と様々な感激でいっぱいの1番が終わり間奏になった途端、 不意に飛び込んできたボーイ姿の男性2名。何なに?も、もしやこれは・・・!?、という期待どおり、いきなりズボンから刀を引き抜き、京本さんに斬りかかるボーイ侍。
さっと軽い仕草でそれをかわすと、逆に京本さんも侍ギターから自慢の刀を引き抜き、見事な刀捌きを披露。
ちゃんと両サイドのお客様も楽しめるよう、右に行ってくるっと回してす〜〜っ、今度は左側で立ち回り&納刀を魅せてくれるサービス精神が心憎い限り!!
斬りつける瞬間、口をむんっとへの字に結び、目をきっとさせる表情が、たまらなく凛々しく、でもどこか遊びに夢中の子供のようで、刀捌きの見事さとともにすっかり見惚れてしまいました。

ファンはもちろん、一般のお客さんも大喜び&大興奮覚めやらぬ中、最後にまたくるっと回して収刀を披露し、(この時に本当にゆっくりと刀を納めるのですが、刃に宝石が埋め込んであるのかと 思うくらい、キラキラと光り輝くのがとても綺麗でした)そっと袖で待機していたスタッフに、大事そう〜に侍ギターを預けたところで場内暗転。
そのままステージ中央に戻り、暗がりの中ごそごそと上着を着せてもらい、嵌めていた手袋を脱がしてもらう京本さん。


「メリークリスマス!京本政樹です」
パッと再びステージが明るくなるとともに、この日最初のご挨拶。先ほどまでの真剣な表情とは打って変わった、晴れやかな笑顔が眩しいです。
真っ白な三つ揃えのスーツの右の襟元には、せきかずさんがデザインされた、手裏剣としだれ桜をかたどったブローチが。中に着ている紫のシャツと白いジャケット、薄桜色のブローチのコントラストが 本当に美しい!今宵初めて、生の京本さんを見たらしいお客様からの「うわ、綺麗〜♪」という悲鳴ともため息ともつかぬ声が、あちこちから聞こえてきます。
会場中の熱〜い視線を一身に受けながら、先ほど着せてもらった上着のボタンをこっそり止めている姿が何とも微笑ましい。
昨夜のイブ、今夜のクリスマスといい大事な夜なのに、カップルで来ている人はともかく、1人で来ている人はどうなの?なんて 冗談交じりの突込みを入れつつ、大事なクリスマスを僕のために空けてくれてありがとう、と何度も繰り返す京本さん。これを皮切りに、この日は本当に何度もMCの度に 今日はありがとう、と繰り返していた姿が未だに忘れられません



さて、必殺当時の思い出話や、元はシンガーソングライターなんですよという自己紹介を終え、「ディナーショーに相応しい曲を」との紹介で流れてきたのは、やはりこの曲。『Yes,Truly Love』
軽いボサノバタッチの調べに乗り、甘い歌声でステージ上を右左と揺れ動く京本さん。
高音部や♪Yes,Truly〜 lo〜ve と歌う際、少し上向き加減で瞳を閉じる姿には、場内の女性はもちろん、おじ様方もうっとり。

続いて流れてきたのはお馴染み『ファッショナブル・スキャンダル』
一段とお洒落でダンサブルになったナンバーに、膝が自然とリズムを取り出します。 ステージの上でもノアさんが頭上で大きく手拍子をし、それに応えるように再び客席から大きな手拍子が沸き起こります。
夏のライブの時にも思いましたが、大谷さんのキーボードの音って華やさはもちろん、音がとにかくデカイのです。 それが聴いていてたまらなく気持ちがイイ!また、演奏中、鍵盤と見台(譜面台)のすき間から、時折キョロキョロと客席を 窺うように覗く目玉が何ともお茶目でした。


ここで再びトークタイムです。夏のライブでもそうでしたが、通常ライブではペットボトルに入った水がステージに置かれるのですが、 今回はホテルらしく(?)、ステージの中ほどに置かれたテーブルの上に高級ティーカップが並んでいました。
今年は本当に忙しかった、と長い芸能生活の中でも特に充実した1年を振り返りつつ、シンガーソングライターになったきっかけへと 話は続き。思い出のアルバム、井上陽水さんの名盤「氷の世界」から、京本さんが最初から好きだったという1曲。

『帰れない二人』
寒い夜の中、なかなか話を切り出せない二人を置いて夜が過ぎ行く様を、陽水さん独特の不思議なメロディーラインと、 シンプルな詞で綴る、密かにファンの間でも人気が高いこのナンバー。 派手な「氷の世界」や「心もよう」といった お馴染みのナンバーではなく、最初からこれが好きだった、というのが何とも京本さんらしいです。
京本さんの柔らかく素直な伸びのある歌声がとてもよく嵌り、陽水氏とはまた違った何とも 言えず切ない色が漂います。
♪もう 星は帰ろうとしてる 帰れない二人を残して
大好きな曲を京本さんの歌声で聴ける、最高の贅沢を噛み締めつつ、ふと♪窓の外にはリンゴ売り〜 とギターをかき鳴らしながら 熱唱する姿も見てみたいな、なんて思ったひとときでした。

『身勝手なkiss〜最初から泣いていた〜』
しっとりうっとり酔わせた次は、恐らく誰もが生で聴く日を心待ちにした、これぞ京本さんならでは、京本さんにしか歌えない究極の悩殺ソング。
のっけから気になってしょうがなかった、ステージ中央に立てかけられていた、茶色を帯びた真っ赤なレスポールを 構え、ドラムとキーボードのリズムに合わせ囁かれた♪あ〜
これを聴いた瞬間、思わず我を忘れて身体中の血が逆流しそうでした。
”最初からあ〜”で必殺パンチを浴びせたかと思うと、♪ここで 抱かれながら〜 と歌が始まれば随所に”身勝手なフェイク”を散りばめ 追い討ちをかける京本さん。素敵すぎますっ。
ピンクのライトを浴びながら、時に妖しくセクシーに、まるで挑発するかのように客席に流し目を送りつつ歌う姿に場内は完全にKO!かと思うと、間奏や後奏ではさらりとレスポールをつま弾く姿にも大感激でした。


『冬色の街』
会場中をすっかり虜にした中、京本さんがステージを降りると同時に流れてきたのは、あの「アーバンポリス24」でお馴染みのナンバー。 歌いながら端から順番にテーブルを回り、1人ずつ差し出された手を握る京本さん。最初はゆっくりだったのがあまりの人数に、2番からは歌いながら走るという場面も。 途中「曲が終わるまでに俺は戻れるのか」と口走り場内爆笑。主が消えたステージの上では、しっとりと演奏しながら「ちゃんと戻ってこれるかな?」と心配そうに、でもニコニコと見守るバンドメンバーの 姿がありました。
今回、とにかく男性客が多いことにびっくりでしたが、このテーブルを回っている際、女性はもちろん男性からも握手攻めに合っていたのがとても嬉しく印象的でした。 無事、長〜い後奏の間にステージへと戻った京本さんに、後方から「カッコよかったぞ〜!」「ありがとう!」というおじ様達の熱い声援が飛んでいました。



『白い夜』
再び短いMCを挟んでクリスマス用にこんな曲を書き下ろして見ました、と歌い始めたのはあの「薄桜記」の歌詞を変えて作られた新曲。
♪クリスマスになると〜 とクリスマスなのに切ない気持ちになってしまう恋人達の思いを歌った曲。歌詞の記憶がかなり曖昧ですが、 ♪帰り来ぬ春の夜 を♪帰り来ぬ白い夜 と変えられていたのが印象に残ってます。
少し暗めのライトに照らされ、切々と歌う姿と情感たっぷりの歌声に聴き入る観客。そっと涙をハンカチで拭う人の姿もあったり、 場内がしんみりとした空気に包まれたひとときでした。

『クリスマス・イブ』
薄暗い場内が徐々に明るくなるとともに、聞き覚えのあるバスドラとベースのリズムに乗り、聞こえてきたのはそう、 日本で一番有名なクリスマスソング。
♪雨は夜更け過ぎに〜 この曲が京本さんの歌声で聴けるとは!
♪心深く 秘めた思い〜 という部分のファルセットに近い高音にうっとり。 ♪Silent night woo holy night ではフェイクの入れ方がめっちゃくちゃカッコイイ!
と大喜びで聴いていると、1番が終わったところで一転次のナンバーへ。

『流されて・・』
♪合わせたグラスの音〜 思いも寄らないナンバーに本当にびっくり!アルバム「翡翠の気持ちがわかる夜」では、ちょっとムーディーな4ビートのナンバーが、 ホーンセクションやサキソフォンを効果的に加え、より一層明るくお洒落でゴージャスな、まさに今宵にぴったりな1曲に生まれ変わって いました。先ほどまで薄暗かった客席にも一斉に明かりが灯り、思わず踊り出したくなるようなワクワクした気分に。
本当に楽しそうに、とびっきりの笑顔で歌う京本さん。最後のフレーズを歌い終えると、今度はなんとそのまま口笛による後奏を! わ、まさかこれが聴けるとはっ(><)。しかも、口笛の音色がとにかく綺麗で、音程がバッチリ正確なことに感動!! 思わぬところで改めて京本さんの音感のよさを実感した瞬間でした。


すっかり盛り上がった場内に、この日もう何度目かわからなくなった感謝の気持ちを表し、先ほどの「流されて・・」の選曲に まつわるエピソードを楽しそうに語ります。本当にこんなに嬉しそうな京本さん見たことがない、というくらい 終始笑顔が溢れていました。
そのまま、ここでメンバー紹介を!とバンドメンバーの紹介をし、 もう1人(2人?)大事な方を忘れていました、との紹介で登場したのは冒頭、華麗な立ち回りの相手を努めてくださった 臨時ボーイのお2人。立ち回りを見せよう、と考えた際、普通に着物を着た人が出てきては面白くない、 そうだボーイさんがかかってきたら面白いだろうな、という京本さんの思いつきで生まれた今回の企画。 昨夜のインターコンチ、今夜の東京全日空で即席ボーイとなったお2人に何か面白いエピソードない?と 尋ねる姿が、いたずらが成功して大喜びしている子供のようでした。
また、今回の東京全日空ホテルは1987年8月のホテル開業時、”こけら落とし”としてディナーショーを行った思い出深い場所。唯一当時を知るメンバーであるノアさんに 「懐かしいねぇ」と振ったのに、「はい。でも、記憶がかなり薄れております」と返されてしまう楽しい一幕も。
と、終始和やかムードだったショーも、いよいよ終わりへと近づきます。


『Love is Afternoon』
再び登場した京本さんの姿に、場内から思わず歓声と息を呑む音が聞こえてきます。 茶色がかった少し渋めな赤のトレンチコートに、ベージュ色のキャノチェ帽。一瞬、あの相原京介を彷彿とさせる、でもとってもクリスマスらしい 姿にしばし見惚れてしまいました。
最後にこの曲を、と始まったのは、夏のライブ以来、もう一度生で聴きたい(><)と願った、極上のバラード。
あの時よりさらに磨きがかかった歌声の良さと、楽しすぎるショーがもう終わってしまう寂しさで胸がいっぱいに。
ノアさんの透き通るように美しいファルセットを聴きながら、今夜の思いを噛み締めるように瞳を閉じる京本さん。 スポットライトの中、浮かび上がるその姿は、神々しいまでのオーラに包まれていました。

そうして、最後の一音が終わり深々と頭を下げると、被っていた帽子をさっと客席の方へ。そのしなやかな手つきと 同じくらい綺麗な弧を描き、帽子は無事客席中ほどへと飛んで行きました。


「Love is Afternoon」の後奏が流れる中、いつまでも鳴り止まない拍手。ライブの後のように興奮に任せてアンコール、アンコール!と叫ぶのではなく、 ひたすら感謝の気持ちを込めて叩かれる拍手の嵐。
それぞれが今宵の余韻に浸りながら、 本当に素敵だった。楽しかった。もっと見たい!という素直な思いに満ち溢れたこの数分間。前方のファンだけでなく、後ろの席からも拍手の波が押し寄せて きたことへの感動、嬉しさ。今日ここに来て本当によかった、と心から思ったひとときでした。


場内の熱い思いに応え、メンバーとともに再び姿を現した京本さん。先刻までの真っ白な衣装から一転、今度はシックに上から下まで 黒一色。うわーっとこの日一体何度上げたかわからない、声にならない歓声が喉の先まで出かかります。
胸元から覗く、シングルのジャケットと同じ(?)ベロア風のシャツのレースのような飾りと、ジャケットの右の襟元にブローチとして留められた桜ペンダントのトップが本当にお洒落で よく似合います。


「アンコールを頂けるのは冥利に尽きます」と客席を見渡し改めて感謝の気持ちを表す京本さん。その声を掻き消すように客席から飛ぶ 「京様〜!」という声援にニッコリ笑って答えると、場内が静まるのを待ち、「これで最後ということで。もうすぐ皆様とお別れするかと思うと 寂しいです」と話し始めます。来年の予定を話されたり、今年1年を振り返ってみたり、再び17年前のディナーショーの思い出を語ったり。あれこれ話しながら「今年は本当に色んなことがありました。こうして歌いながらいいことも悪いこともばーっと思い出していたら……、 感無量です」と言葉を切った京本さんの目元が潤んでいます。
その様子に今年1年の色んな出来事や、ここに至るまでの長い道のりが頭をよぎり、じーんと胸が熱くなります。
ふと周囲を見渡せば、昔から本当に長い間、ずっと京本さんを支え続けたファンの方々が、あちこちで堪えきれず涙を拭っていました。 その様子が本当に温かく、京本さんの涙以上に感動でした。

その後もシャンプー&リンスの話題が飛び出したり、思わず客席と会話してしまったり、「これを歌ったら、もう終わりなんですよ」 と言ってなかなか歌おうとしない京本さん。話があちこちに飛び、途切れるたびに「今日は本当にありがとう」と胸の前に手を当て、 何度も観客に頭を下げる姿は、多分この先もずっと忘れられないです。


終わりたくない、と誰もが願う中、けれども無情にも最後の時間はやってきます。
「それじゃ、11月の26日に発売したばかりの新曲を聴いてください」と言った後、くるりと背を向け一口水を含み、再びステージ中央に戻り桜ギターを 構えると同時に、美しくも哀しいピアノの調べが流れ出します。
♪何ー故に な〜ぜ〜に忘れ られな〜い〜
この1曲を聴くためにここまでやって来た、そう思えるほど生で聴く新しい「薄桜記」の良さにただただ感無量。
京本さんの優しくも切なすぎる歌声と、柔らかなギターやエレキピアノの後ろで、しっかりと、でもそれら全てを温かく包み込むように、 ブラシ奏法で叩かれるドラムスのシャーシャーという音が、波のように耳の奥に広がっていく心地よさ。
万感の思いを込めた歌声が流れる中、薄桃色だった背景はいつしか舞い散る桜に変わっていました。


♪帰り来ぬ春の夜〜〜
最後のフレーズを終え、後奏が流れる中深々と客席に頭を下げた京本さんに、会場中から温かな拍手が沸き起こります。
駆け寄って花やプレゼントを渡すファン1人1人に本当に優しい笑顔で、全身で喜びと感謝の気持ちを現しながら、丁寧に応対される京本さんを温かく見守るバンドメンバー。
その確かな演奏は、最初から最後までずっと京本さんの歌声を支え、けれどもここぞという時には、こっそり自己主張を聞かせて楽しませてくれました。
今も目を閉じれば、歌声とともに本当に心地よかったあのフレーズの数々が耳の奥にこだまします。

最後にもう一度場内を見渡し、
「ハッピーメリークリスマス!!」
とびっきりの笑顔で手を振りながら、鳴り止まぬ拍手の中とうとうステージから消えていきました。


京本さん、そしてあの日会場にいた全ての皆様、本当に本当に素敵なクリスマスをありがとう!!

2004年12月25日

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