●● 織田信長 ●●
1979年テレビ東京が開局15周年記念として映画『人間の条件』を12時間にわたり放映したのがきっかけで、1981年から始まった12時間超オリジナルドラマ。
テレビ東京の前進、東京12チャンネルであるチャンネル数の"12"にちなみ、毎年正月の1月2日の正午から深夜0時まで１２時間連続で歴史上の偉人の生涯を豪華キャストで描き、2000年まで続いたお正月の風物詩です。
ちなみに２０年の歴史のうち、山本五十六や信長、秀吉といった戦国武将をとりあげた５作品以外は、すべて江戸時代の人物にスポットを当てた作品となっています。
今回、紹介するのはその貴重な５本のうちの１本。山岡荘八著『織田信長』を高橋英樹主演でドラマ化し、主役の高橋英樹を始め、三田村邦彦、風間杜夫、小野寺昭、津川雅彦、長門裕之、北大路欣也、神山繁、伊吹剛ら時代劇ではお馴染みの キャストを揃えた力作。
この枠では従来の人物像に独自の視点を加えたストーリー作りが多いですが、今回は山岡氏の原作にほぼ忠実に濃姫との結婚直前の少年期から物語はスタートし、本能寺の変までを描いています。
一般的な信長の印象と言えば、気性が激しく、ともすれば強面で傍若無人なイメージが強いですが、この作品でもそういう部分は残しつつも、無邪気だったり、案外陽気で非常に愛妻家である面も描き、人間的な魅力に溢れた、ややもすると爽やかさすら感じる 信長像に仕上がっています。
また、信長本人や家臣、敵対する戦国武将の面々だけでなく、濃姫にもスポットを当て、 単なる武将の妻ではなく、１人の女性として信長のみならず秀吉ら家臣からも一目置かれた存在として描かれています。
後半では、後に本能寺の変を起こす明智光秀について、何故彼が謀反を起こすに至ったかを心情を交えて丁寧に描きました。
信長は光秀を疎んじていたわけではなく、寧ろ秀吉とは違った面で参謀として高く評価していたにも 関わらず、その気性の激しさと光秀のような生真面目な部下の扱いには長けていなかったが故、両者の思いがすれ違っていった様子がドラマを通して伺えます。
信長、秀吉、家康と言った錚々たる面々に囲まれ、様々な辛酸を舐めながらも職務を忠実にまっとうに遂行しようとする光秀の姿には、真面目すぎる中間管理職の悲哀さと 同情を禁じ得ません。
クライマックスの本能寺における明智、織田方入り乱れての大立ち回りは圧巻です。
この作品で京本さんが演じたのは、室町幕府第15代将軍、足利義昭。兄である第13代将軍・義輝亡き後、信長に担がれ上洛し、15代将軍に就き室町幕府の再興を目指すも、信長と武田信玄の対立に乗じ信長の追い落としを図ったため、不興を買い備後国へ送られた室町幕府最後の将軍。
煌びやかな装束に身を包み、烏帽子姿も凛々しい公方様。信長をして「ひれ伏したかと思えばすぐ裏切る」と言わしめた通り、プライドが高く意のままに物事が進んでいると機嫌がよく、鷹揚さすら感じさせますが、 少しでも意に沿わない事柄に対しては過敏とも言える反応を見せる様が、台詞だけでなく表情、細かな仕草から見て取れます。
信長と義昭の関わりはそう多くないため、五部の前半部分のみと出番は少ないですが、その中でも色んな姿を見せてくれています。
個人的にお薦めは、館を信長軍に取り囲まれたことを知った義昭が、狼狽するあまり口をぱくぱくさせるシーン。目と顔を左右に動かし周辺を窺いながら口をぱくぱくさせ、奥へ行きかけて 忌々しそうにまた元の位置まで戻り、扇子を突き出し「誰か、誰かおらぬか！」と叫ぶくだり。
台詞を発するまでのほんの短い間に、実に色んな表情、仕草を見せてくれるのですが、その無言の振るまいが台詞以上に雄弁に義昭の心情を表しています。更に従者たちは皆、信長を恐れ逃げ出し、残ったのは自分と徳松のみと知った時の「知らぬは公方ばかりか……」 と落胆する流れで見せる表情、台詞を発するまでの僅かなため等見どころがいっぱいです。
京を追われたシーンでは、白装束にロイヤルブルーの羽織、烏帽子もないむき出しの頭髪から所々ほつれた乱れ髪姿も披露。この時の虚ろな表情が、何とも言えないうらぶれっぷりに満ちているのがたまりません。
出番は少ないですが、その分インパクトは大きく、京本政樹ここにあり！ ということをしっかりと見せつけてくれています。
ちなみに２０年の歴史のうち、山本五十六や信長、秀吉といった戦国武将をとりあげた５作品以外は、すべて江戸時代の人物にスポットを当てた作品となっています。
今回、紹介するのはその貴重な５本のうちの１本。山岡荘八著『織田信長』を高橋英樹主演でドラマ化し、主役の高橋英樹を始め、三田村邦彦、風間杜夫、小野寺昭、津川雅彦、長門裕之、北大路欣也、神山繁、伊吹剛ら時代劇ではお馴染みの キャストを揃えた力作。
この枠では従来の人物像に独自の視点を加えたストーリー作りが多いですが、今回は山岡氏の原作にほぼ忠実に濃姫との結婚直前の少年期から物語はスタートし、本能寺の変までを描いています。
一般的な信長の印象と言えば、気性が激しく、ともすれば強面で傍若無人なイメージが強いですが、この作品でもそういう部分は残しつつも、無邪気だったり、案外陽気で非常に愛妻家である面も描き、人間的な魅力に溢れた、ややもすると爽やかさすら感じる 信長像に仕上がっています。
また、信長本人や家臣、敵対する戦国武将の面々だけでなく、濃姫にもスポットを当て、 単なる武将の妻ではなく、１人の女性として信長のみならず秀吉ら家臣からも一目置かれた存在として描かれています。
後半では、後に本能寺の変を起こす明智光秀について、何故彼が謀反を起こすに至ったかを心情を交えて丁寧に描きました。
信長は光秀を疎んじていたわけではなく、寧ろ秀吉とは違った面で参謀として高く評価していたにも 関わらず、その気性の激しさと光秀のような生真面目な部下の扱いには長けていなかったが故、両者の思いがすれ違っていった様子がドラマを通して伺えます。
信長、秀吉、家康と言った錚々たる面々に囲まれ、様々な辛酸を舐めながらも職務を忠実にまっとうに遂行しようとする光秀の姿には、真面目すぎる中間管理職の悲哀さと 同情を禁じ得ません。
クライマックスの本能寺における明智、織田方入り乱れての大立ち回りは圧巻です。
この作品で京本さんが演じたのは、室町幕府第15代将軍、足利義昭。兄である第13代将軍・義輝亡き後、信長に担がれ上洛し、15代将軍に就き室町幕府の再興を目指すも、信長と武田信玄の対立に乗じ信長の追い落としを図ったため、不興を買い備後国へ送られた室町幕府最後の将軍。
煌びやかな装束に身を包み、烏帽子姿も凛々しい公方様。信長をして「ひれ伏したかと思えばすぐ裏切る」と言わしめた通り、プライドが高く意のままに物事が進んでいると機嫌がよく、鷹揚さすら感じさせますが、 少しでも意に沿わない事柄に対しては過敏とも言える反応を見せる様が、台詞だけでなく表情、細かな仕草から見て取れます。
信長と義昭の関わりはそう多くないため、五部の前半部分のみと出番は少ないですが、その中でも色んな姿を見せてくれています。
個人的にお薦めは、館を信長軍に取り囲まれたことを知った義昭が、狼狽するあまり口をぱくぱくさせるシーン。目と顔を左右に動かし周辺を窺いながら口をぱくぱくさせ、奥へ行きかけて 忌々しそうにまた元の位置まで戻り、扇子を突き出し「誰か、誰かおらぬか！」と叫ぶくだり。
台詞を発するまでのほんの短い間に、実に色んな表情、仕草を見せてくれるのですが、その無言の振るまいが台詞以上に雄弁に義昭の心情を表しています。更に従者たちは皆、信長を恐れ逃げ出し、残ったのは自分と徳松のみと知った時の「知らぬは公方ばかりか……」 と落胆する流れで見せる表情、台詞を発するまでの僅かなため等見どころがいっぱいです。
京を追われたシーンでは、白装束にロイヤルブルーの羽織、烏帽子もないむき出しの頭髪から所々ほつれた乱れ髪姿も披露。この時の虚ろな表情が、何とも言えないうらぶれっぷりに満ちているのがたまりません。
出番は少ないですが、その分インパクトは大きく、京本政樹ここにあり！ ということをしっかりと見せつけてくれています。
| 部数 | サブタイトル |
| 一部 | 見参！尾張の風雲児 |
| 二部 | 宿敵まむしの道三起つ！ |
| 三部 | 奇襲！桶狭間 |
| 四部 | 将軍危うし！怒涛の上洛 |
| 五部 | 天下激動！愛悲し戦国の女たち |
| 六部 | 壮絶！本能寺炎上 |
| 主要キャスト | ||||
| 織田信長 | 高橋英樹 | 濃姫 | 涼風真世 | |
| 木下藤吉郎 | 三田村邦彦 | 徳川家康 | 風間杜夫 | |
| 明智光秀 | 小野寺昭 | お珠 | 戸田菜穂 | |
| 前田利家 | 宮内 洋 | お市の方 | 中村あずさ | |
| 柴田勝家 | 若林 豪 | 斎藤道三 | 津川雅彦 | |
| 織田信行 | 石原良純 | 武田勝頼 | 三浦浩一 | |
| 平手政秀 | 長門裕之 | 蜂須賀小六 | ガッツ石松 | |
| 森 欄丸 | 大沢樹生 | 徳姫 | 若林志穂 | |
| 奈々 | 藤崎めぐみ | おね | 吉川十和子 | |
| 築山御前 | 浅利香津代 | 丹羽長秀 | 伊吹 剛 | |
| 浅井長政 | 堤大二郎 | 織田信秀 | 神山 繁 | |
| 足利義昭 | 京本政樹 | 足利義輝 | 北大路欣也 | |
1994年1月2日
