● 女ねずみ小僧SP1 いけないことだぞ!大江戸マラソン博奕地獄  ●

1970年代に小川真由美主演、1984年には中原理恵主演でドラマ化され、人気を博した女ねずみ小僧を1989年にフジテレビが大地真央主演で連続ドラマ化。そのスペシャル版が脚本・三谷幸喜、音楽・渡辺俊幸という、いまやどちらもテレビや映画等に引っ張りだこの2人を起用して製作・放映されました。

女ねずみ小僧ことお凛(大地真央)と男ねずみ小僧=留吉(伊武雅刀)は、悪事を働き私腹を肥やす者たちから盗んだ金を貧しい人々に分け与えることで、江戸の人々から慕われていた。
ところがある日、ねずみにもらった金で博打に嵌り、借金取りに追われる男を見たお凛は、自分がしてきたことは間違いだったのでは?と悩む。
さて、江戸の庶民は今年も奉行所が主催する大江戸早駆け競争の話題でもちきり。今回の賞金はなんと250両。我こそは、と思うものたちは大金を目指し闘志を燃やしていた。 そんな中、目下連続優勝中、今回も大本命と見られていた又八が何者かに殺されてしまう。一気に混迷を深めるレースの行方に、油問屋・大黒屋の主、幸助(北村総一郎)は賭博でひと儲けを企む。
又八の死に疑念を抱いたお民(森口遥子)、お弓(森沢なつ子)、清次(白竜)らは大黒屋が加賀藩家老・末安主水(早川雄三)と組み裏で画策していることを突き止める。
一方、留吉は賭場で偶然知り合った若い男・金(野々村真)を気に入り、連れ回すうち金がねずみ小僧をこの上もなく尊敬していることを知り、うっかり正体を白状してしまう。金は留吉に弟子入りすることに。

稼業から足を洗うことも考えていたお凛だったが、大黒屋らを懲らしめるため早駆け競争で一仕事打つことを決意。賭博相手になりすまし、留吉を参戦させ大黒屋に大損させる計画を練る。 また、別の方面から大黒の悪事を暴こうと目論む南町奉行所同心・田坂新吾(京本政樹)も、自らがレースで優勝しあてが外れたところを捕らえようと意気込んでいた。
レース当日、お凛らの陰謀に気づいた大黒屋と末安が、急遽賭けの対象を留吉から、末安の配下の元忍・小曽間寒月(我王銀次)に変更。お凛も大本命と見られていた脇瓜から留吉へと変更。いよいよレースの火ぶたが切って落とされた。勝敗の行方はいかに!?


織田裕二・石黒賢主演で大ヒットした『振り返れば奴がいる』(1993年)で一躍脚光を浴びた三谷氏ですが、この作品はテレビドラマ脚本家として駆け出しの頃の作品。三谷ワールド全開、という感じには程遠いですが、随所に彼らしい遊び心が散りばめられた 楽しい作品に仕上がっています。
ワキウリ、イカンガーといった'80年代を代表する2大ランナーをもじっていたり、彼らに所縁の深い瀬古利彦さん(ただし、そっくりさん)も出場しています。
ちなみにダグラス・ワキウリは、ケニア出身で瀬古選手に憧れSB食品に入社。1988年ソウル五輪で銀メダルを獲得。今も日本に住み、各地のレースにゲスト参加されています。
ジュマ・イカンガー(タンザニア)は、1980年代前半、東京国際や福岡国際など数々の国際大会で優勝し、日本人にも 馴染みの深いランナーです。特に、1983年の福岡国際マラソンでは平和台競技場最終コーナーまで瀬古選手と競り合い、3秒差の2位となったレースは未だに語り草になっています。
また、初期の三谷作品には必ず出演されていた、西村雅彦、梶原善、の両名の姿もきっちり見られるので探してみるのも一興です。
他にも最後に明かされる金の正体(オチ?)にも注目です。


さて、この作品で京本さんが演じたのは南町奉行所同心・田坂新吾。これでもか、というくらい見事に剃り上げられた中剃りの鬘姿も青々しく、常に岡っ引きの半助(桜金造)を従え、ねずみ小僧一味を捕らえようと躍起になるも失敗ばかり。
この作品のほんの先から始まる『大江戸捜査網』で演じた新さんこと、秋草新十郎に輪をかけたお調子者&ドジ。
基本的にお笑い路線のため、凛々しい立ち回りなどは殆ど見られませんが、その代わりにかなりはっちゃけた姿があちこちで見られます。
大黒屋の悪事を暴こうと、当たりをつけて踏み込んだまではよかったものの、返り討ちに遭い腰を抜かしたり。マラソン大会では、コントばりの変顔で力走する姿を見せてくれます。歯を食いしばり、着物の裾をお腹のあたりまでたくしあげた今で言うところの短パンスタイルで 力走する新吾。白く細い手足を惜しげもなくさらし、思わず眼が釘付けになってしまいますが、とにかく細い!白い!のに改めて驚かされます。
また、要所要所で細かな小芝居をしていたり、いちいち大袈裟な動きが楽しく、若さ溢れるおちゃらけ京本さんをたっぷり堪能できます。

1990年9月26日

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