● 平清盛  ●

祗園精舎の鐘の声、 諸行無常の響きあり。 娑羅双樹の花の 色、 盛者必衰の理をあらはす。 おごれる人も久しからず、 唯春の夜の夢のごとし。

貴族が絶大な権力を握り、朝廷が意のままに国を動かしていた時代に新興武士の家に育てられ、やがて武士の頂点に立ち、国をも動かす地位を手に入れた ものの、平家にあらずんば人にあらず、と栄華の限りを尽くしたのが祟ってか、冒頭に紹介した『平家物語』に代表されるように、歴史上では功績よりも悪名の方が後世にまで轟いて しまった平清盛。

『新平家物語』以来実に26年ぶりに再び大河ドラマの主役となった今作では、”武士の世を作る”ということで、源頼朝を語り部とし、彼の視点から見た清盛ら平家一門、源義朝を中心とした源氏一族が平家に代わり台頭していく様を描いています。

1963年に大河ドラマが始まってから半世紀を迎えた本作では、前年の反省を踏まえ、主役に自ら志願した松山ケンイチ、ライバルとなる義朝役に玉木宏を起用。中井貴一、伊東四郎を筆頭に大河初出演の三上博史、松雪泰子らの豪華な顔触れで脇を固め、 近年のわかりやすい大河ではなく、1年という長いスパンで清盛を中心とした平安群像を描くという意気込みでスタートしましたが、平安末期の時代を再現しようとした画面効果が当時の兵庫県知事に「汚くて見る気がしない」と評されたのを端緒に 徐々に視聴率が低迷。しかしながら、様々な批判に怯むことなく最後まで当初の姿勢を貫き、近年では久しぶりに骨太な大河ドラマとなりました。
特にドラマのもう一方の軸として描かれた朝廷側は、1年を通じて常に魅力的な演技に溢れ、非常に見ごたえがありました。
また、上に挙げた映像だけでなく衣装や舞台脚本を担当した藤本有希さんのつながりか、清盛の母を演じた和久井映見はじめ『ちりとてちん』に出演した役者がレギュラー、ゲスト 問わず随所で登場しています。


さて、上述したとおり、藤本さんつながりで京本さんも出演してほしいな、するはず! という根拠のない自信に基づき初回からがっつり見れども月日は流れ。遂に出演が決定したのは8月も終わりに近づいた頃。
そのため出演回数は37話、45話、47話の3回となってしまいましたが。
実に5度目の大河出演となる本作で京本さんが演じたのは、藤原秀衡。平安時代、黄金・駿馬の産地として知られる東北の支配者として全盛期を築いた奥州藤原氏の3代目当主。
”秀衡が治める平泉は黄金の都。その財力に裏打ちされた圧倒的なカリスマ性とゴージャス感を表現できるのは京本政樹さんをおいてはいない”という製作者側のコメントに裏付けられるように、3回の出演シーンはいずれも衣装がとても 煌びやかで豪華です。特に45、47話では金の衣装に金で縁取られた烏帽子からは白髪交じりの髪を覗かせ顎髭をたくわえるという、これまでにない姿を見せてくれています。
これが非常に貫録たっぷり。顔見せとなった37話で見せた、ギラギラした感じは消え、全体的に余裕たっぷりな様子が窺えます。弁慶相手に手合わせに興じる義経を見つめる時の、ニヤリと笑いながら、あごひげを撫でる仕草がたまりません。脇息に身をもたせ、やや斜に構えた様子でしわがれ声でゆっくり話す秀衡。その立ち居振る舞い、所作のひとつひとつ、ややよろける 足取りさえもが美しく、圧倒的な存在感に短いシーンながら目が釘付けになります。
また、3回の出演すべてに共通して見られる、伏し目から薄目、細めがちに開き相手を見据えたのち、流し目へと変化する細かな表情にも注目です。


今回の出演にあたり、2012年11月16日には「スタジオパークからこんにちは」へも出演。
時代劇にかける思い、目張りや様式など先達から受け継いできたモノを継承することの大切さ、ハイビジョン時代に対応したメイクの模索etc.をたっぷり語ってくれています。 ゲストの話をじっくり聞く形式のトーク番組が殆どなくなってしまった昨今、これだけの内容が放送されたことに感謝です。大河本編以上に見どころ満載、その熱過ぎる思いにこみ上げて来るものがあります。



主要キャスト
平 清盛松山ケンイチ源 義朝玉木 宏
平 盛国上川隆也平 時子深田恭子
平 忠盛中井貴一白河法皇伊東四朗
平 時忠森田 剛後白河法皇松田翔太
源 頼朝岡田将生藤原頼長山本耕史

2012年1月9日〜12月22日

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