● あんみつ姫  ●

甘辛国の好奇心旺盛なお姫様・あんみつが繰り広げる笑いと涙に溢れた時代劇コメディーの名作・あんみつ姫(原作:倉金章介)。
1950年代〜1960年にかけて幾度も映画・ドラマ化され、1983〜1984年には小泉今日子主演で数回に渡りドラマ化、その後1986年にはテレビアニメにもなり、 コミックスも発売。キョンキョンver.やアニメを子供の頃に見たという方もいることでしょう。そんな何十年にも渡り愛された人気作品を今回は井上真央をヒロインに再びドラマ化。“ラブ”をテーマに思いやり・友情・家族愛をコメディタッチで描いた 子供からお年寄りまで誰もが楽しめる内容に仕上がっています。


甘辛国のプリンセス、あんみつ姫(井上真央)は可愛く天真爛漫な誰からも愛されるお姫様。発明好きな城主である父・あわの団子の守(柳葉敏郎)からプレゼントされたローラースケートならぬローラー下駄を履いて場内を 走り回り、周囲をやきもきさせるやんちゃな面も。そんなお転婆娘を案じる母・てん茶(和久井映見)は16歳の誕生日にお見合いを実施。これと見込んだ男性を紹介するが、あまりに個性的すぎる面々に姫は 呆れそっぽを向くばかり。
城の中の籠の鳥状態に嫌気がさしたあんみつは、祖母・しぶ茶(白川由美)の助力を得、小姓・甘栗の助(今井悠貴)とともに城を脱出。市中に”ラヴ”を探しに繰り出した。

何もかもが初めてづくしで、甘栗の心配をよそに浮かれ気分のあんみつだが、街で出会ったスリ集団”こんぺい党”一味にしぶ茶からもたされた10両(!)をすられてしまう。
偶然助けた幼い娘を家に送り届けた先で、こんぺい党一味に再会したあんみつと甘栗だったが、リーダーの煎兵衛(小出恵介)とともにその日暮らすのもやっとのあばら屋に住む3人の子供達の姿にショックを受ける。
そのまま煎兵衛たちの家に居ついたあんみつと甘栗を始めはけむたそうにしていたが、次第に奔放なあんみつに惹かれていく。
やがて、あんみつに諭されスリから足を洗う決心をした煎兵衛は、世話になっている住職・喜多内太郎(段田安則)に就職の斡旋を依頼。快く承諾した喜多内がもちかけたのは、甘辛城に忍び込み宝を盗んで来る、というとんでもないものだった。


十数年の時を経て、再び映像化された「あんみつ姫」は、あんみつ姫が持つ楽しく明るいカラーをふんだんに盛り込みながら、登場人物それぞれが見せる愛の形にほろりとさせられる笑いと涙に溢れ、見るものを元気にさせてくれるドラマです。
あんみつ、団子、あられ、あめ吉、おはぎ等等、聞いているだけで涎が出てきそうなネーミングが楽しく、その一方で敵役は塩辛国の家老・腹黒伊蔵(はらぐろいぞう)に喜多内太郎(きたないたろう)という絵に描いたような悪名ぶりが笑えます。
ハナカミ王子や手ぬぐい王子等、時事ネタも織り込みつつ、随所にかつての名作時代劇へのオマージュが散りばめられており、 BGMやちょっとした台詞、シチュエーションなどに「暴れん坊将軍」「必殺仕事人」「遠山の金さん」といった他局の人気番組がリスペクトされまくっているのが見るものの心をくすぐります。 もちろんフジが誇った「影の軍団」もしっかり登場。千葉さんつながりなのか(?)日陰の軍団の装束が何故か迷彩服、という「戦国自衛隊」(注:かつて千葉真一主演・アクション監督で大ヒットした角川映画)を彷彿させるおまけつき(笑)。
楽しいストーリーもさることながら、そういう作り手の溢れるほどの愛が嬉しく、次は何が来るんだろう?とワクワクさせてくれます。


この作品で京本さんが演じたのは、金つばのリュウ。あんみつ姫が行くところ、ある時は芸者、またある時は尼さん、そのまたある時は町娘と常に女性を伴いながら現われ、さりげなくあんみつ姫の窮地を救う謎の遊び人。しかしてその実態は、東町奉行あんみつ同心・遠山竜之進。 お馴染みのシケがはらりと垂れた鬘に白地に帯と同色の草木の模様が散りばめられた着流し。首にはお馴染みの紫のマフラーを巻き、密かに下駄の鼻緒もマフラーと同色なのに京本さんらしいこだわりが窺えます。
名前はリュウながら、そう、見た目はあの名張の翔とそっくり。登場するたび、チリーンと懐かしい鈴の音が鳴るリュウさん。すっと斜に構え、あんみつ姫の様子を窺うかのような流し目がもうたまりません。
あんみつ姫の窮地にさりげなく登場し、独楽を投げたり、ある時はマフラーを投げたー!と思ったら、中から仕込み組紐が登場、ぴーんと張った組紐で雲水達を一斉にコケさせる、というファンにとっては嬉しすぎるサービスで活躍。
クライマックスでは、かつての仕事人仲間、中条きよしさん扮する腹黒伊蔵と修羅之介ばりの立ち回りを披露!という、ファンにとっては盆と正月ならぬ、1年の祝い事がすべて合わさり大挙して押しかけてきたかのような究極のキャラクターでの 登場となりました。
見どころはすべて、と言っても過言ではないくらい登場するシーンどれもが美味しく、その1シーン1シーンにファンが見たい!と思うポイントを突いたサービスシーンを盛り込んでくれるのが嬉しい限りです。何気ない立ち姿ひとつとっても、首の傾け具合から手振りや足の位置まで、 とことんこだわりが感じられる所作は必見。艶やかさを増した独特の口調やますます熟成された立ち回り、長い年月を経ても変わらぬ艶姿に改めて感慨を覚えます。
たっぷり妖艶さで魅了してくれる一方で、早乙女太一君扮する、当代きっての人気役者・桃山三太夫に対する「あいつ俺とちょいと被ってやがる」「美味しい出方しやがんなあいつ」 という台詞に、思わずにんまりさせられます。

出番自体は、実はさほど多くはないのですが、そのどれもがインパクトがありすぎ、美味しいシーンがてんこ盛りのおかげで満足度は充分。ストーリー自体もよく出来ている為、最後まで飽きさせません。
京本さん以外でも、和久井さんがゲッツを披露していたり、さりげなく室井管理官な柳葉さんが見られたり。極めつけはこんな中条さん見たことがない、というくらいのはっちゃけぶり。特に段田さん扮する喜多内様との腹黒漫才は何度見ても笑えます。
その他にも甘栗を始めとする子役たちの可愛さと熱演ぶりが愛しく、健気な彼らの姿にほろりとさせられます。
全体的にベタな展開ながら、そのベタぶりが逆に素直に心のひだを捉え、見終わった後にいい話だなーと暖かな気持ちにさせてくれます。 散々笑って、うっとりしたり、心の底から楽しんだ後のあわの守様の台詞「人こそこの国の宝だ」が心に沁みます。

製作・出演者含めた作り手の愛がひしひしと伝わる 娯楽時代劇の集大成のような平成版あんみつ姫、出来ることなら来春もまた再会したいものです。


主要キャスト
あんみつ姫井上真央金つばのリュウ京本政樹
甘栗てん茶今井悠貴いちご大福中川翔子
煎兵衛小出恵介あわの団子の守柳葉敏郎
カステラ夫人夏木マリおはぎ森迫永依
あべかわ彦左衛門泉谷しげる桃山三太夫早乙女太一
しぶ茶白川由美喜多内太郎段田安則
てん茶和久井映見腹黒伊蔵中条きよし

2008年1月6日

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