● ウルトラマンをつくった男たち 星の林に月の舟  ●

『ウルトラマン』『ウルトラセブン』シリーズの演出で知られる、実相寺昭雄氏の自伝的著書『星の林に月の船 怪獣に夢見た男たち』 を著者自らがドラマ化。
昭和41年の誕生以来、特撮史に多大な功績を残し、21世紀の今も尚、新シリーズが制作されている”ウルトラマン”。その草創期に手探り状態の中、番組作りに情熱をかけた人々を描いた感動作です。


TBS演出部所属の吉良平治(三上博史)は、部内きってのトラブルメーカー。夏のシーンに雪を降らせてみたり、歌番組では人気歌手の顔をブラウン管いっぱいに 映してみたり、とその斬新で独創的な演出には視聴者・タレントともに不満の嵐。そんな平治の処遇に頭を悩ませた金子部長(伊東四郎)はある日、特撮モノを手がける円谷プロへの出向を命じる。
平治の演出家としての腕を買う円谷英二(西村 晃)の後押しで、放送開始以来人気上昇中の「ウルトラマン」の演出担当することになった平治が喜んだのも束の間、職人気質の特撮担当・高田(大地康雄) ら現場スタッフの平治への風当たりは思いの外強く、慣れない特撮現場に四苦八苦する日々。
しかし、必死で新しいモノを作り上げようとする平治の姿に、頑なだったスタッフ達も徐々に協力するように。やがて、平治が監督した作品は放送されるや大反響を呼び起こすのだが……。


主役の三上博史、南果歩をはじめ、国生さゆり、石田純一、三宅裕司、永島敏行、柳沢慎吾ら当時の人気モノがズラリと顔を揃えた本作は、 丁寧な作りと演技で2時間強という長丁場にも関わらず、最初から最後まで飽きることなく、時に笑いと感動を交えて見ごたえたっぷり。
原作者である実相寺氏を始め、実際に『ウルトラマン』シリーズを制作していた、佐々木守、高田高道氏が脚本・監督を手がけたこの作品は、当時をよく知るものならではの エピソードが満載。まだCGも何もなかった時代、炎上するシーンでセットが燃えてしまったり、スタッフが持つ竹棒をウルトラマンと怪獣に見立てた演技など、全て手作りだった当時の苦労・アイディアには感心しきりです。 少ない予算の中、必死に良いものを新しいモノを作ろうとする姿が清々しく、その真摯な思いが画面を通してひしひしと伝わり、思わずジーンときてしまうことも。
また、ウルトラ隊員として活躍した、黒部 進、小林昭ニ、毒蝮三太夫の3名がスタッフ役として出演、往年のファンを大いに喜ばせました。


駆け出し時代、時代劇などで子供の頃に見ていたヒーローを演じてきた方々との共演により、特撮ヒーローへの想いを徐々に再燃させていった京本さん。そんな思いは、コンサートやイベントなどでのトークのネタから、ファンの間で徐々に密かに広まっていきました。 しかし、アイドル並の人気を誇っていた当時、世間では演じる役柄や見た目の印象から、クールで寡黙なイメージが一般的でした。ところが、「テレビ探偵団」(1988年6月放送)を始めとする、バラエティー番組などで ウルトラマン好きを自ら公表したことから、一気に京本政樹=ウルトラマンマニアの認識がお茶の間に広がるように。そんな噂を聞きつけた円谷プロより、 「それほどお好きなら、是非出演を!」と声をかけられたのが今回の作品です。

このドラマで京本さんが演じられたのは・・・、ウルトラマン・アクター=ウルトラマンの中の人。
というのも、急な出演依頼だったため、話が来た時点で殆どの配役は既に決定済み。残っていたのは『ウルトラマン』の撮影現場をリポートする役かウルトラマン役のみ。 「本来ならば、台詞もなく顔の見えないウルトラマンより、レポーター役の方を取るべきだ」、そう思いながらもウルトラマンの中に入れる!という誘惑に 勝てなかった京本さんが選んでしまったのが、ウルトラマンの中の人役でした。
しかし、せっかく出演してもらうのに、いくらなんでもそれだけでは・・・。という製作サイドの好意により、急遽ウルトラマン・スーツを上半身だけ脱ぎ顔が見えることに。 更に主役である三上さんと会話を交わすシーンに、と台本も書き換えられての出演となりました。

そんなわけで、出演時間は3分にも満たないですが、撮影当日は嬉しさのあまり大はしゃぎだった京本さんの思いを象徴するかのような、晴れやかで爽やかな笑顔と熱演をじっくり 堪能しましょう。
また、出番は少ないながら、放送当日は朝から宣伝番組で熱く見どころを語る姿が見られた他、ウルトラマンスーツがとにかく暑くて大変だったり、着ぐるみで視界が効かないため、板から落ちるシーンでは本当に転んでしまったり等、 目には見えない、けれども京本さんにとってはとても嬉しく貴重な苦労話も残る1本です。


「特撮は決して子供向けじゃない!」機会があるごとに力説される京本さんですが、本当にその通りだと心から実感できる、そして 見終わった後に、ウルトラマンって凄い!特撮って素晴らしい!!そう思わずにはいられない、見るものの心を熱くしてくれる素敵な物語です。


1989年3月21日

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