● 眩しい季節 サポート  ●

ベーカリーショップ・プレッツェルで働く成瀬ゆかり(田村英里子)は、とある事件がきっかけで教職を辞した元高校教師。 厳しく口は悪いが、心優しい主人(五代高之)といつも明るく優しい妻(白石まるみ)に見守られ、忙しくも充実した日々を送っていた。

そんなある日、ゆかりはパンを万引きした女子中学生の後を追い、少女が苛められている現場を目撃する。彼女たちは近くにある誠風学園の生徒たちで、万引きをした少女の名前は堀川しの(藤井真喜子)。しのは 寺本ななえ(大谷みつほ)ら3人から連日のようにいじめられ、恐喝まがいの目に遭っていた。
数日後、プレッツェルにパンの代金を返しに来たしのは、おどおどしているところを常連客に見咎められ逃走。 しのが触れたというパンの中にはカミソリの刃が仕込んであったことから、ゆかりはしのを問い詰めるが、しのは見知らぬ男がやったと主張。
この件がきっかけで、しのと会話するようになったゆかりは、しのをパンの配達で馴染みとなっていた道場・修武館に連れて行く。
実はゆかりは学生時代に剣道をやっており、道場で指導する前田(森田健作)にしのに剣道の稽古をつけてくれるよう頼む。以前にも教え子に剣道を薦め、いじめから立ち直らせようとしたことがあり、しのに苛めに負けない心を持たせようとの 考えからだった。 最初は渋々だったしのも、道場に通ううち笑顔を見せるように。

ゆかりがしのの世話を焼くのが面白くない寺本は、ある晩帰宅途中のゆかりに切りかかる。たまたま喫茶店のマスターが通りかかった おかげでかすり傷で済んだが、翌日プレッツェルに訪ねてきた教師の態度に反感を覚え、結果としてななえをかばうことに。
その代償としてゆかりはななえに今後しのを苛めないよう言い渡す。
しかし、どうしても腹の虫が収まらないななえは、近くの別の道場に通い仕返しのチャンスを狙っていた。

そんな折、しのが通う世田谷・修武館と府中の誠真館の間で親善試合が行われることになり、しのもメンバーに選ばれる。 試合に向け毎晩特訓を行うしのとゆかり。
当日、しのの前に誠真館のメンバーとしてななえが現われる。真剣勝負の末、ななえを下したしのは遂にななえと和解することに。
喜びに沸くゆかりの前に、去ったはずの恋人としや(湯江健幸)が姿を現し、ゆかりは新しい一歩を踏み出すことに……。


『俺は男だ・完結編』以来、スポーツ青春モノや一風変わった政治映画etc.様々な作品を発表してきた森田健作さんが、今や社会問題となりつつある ”いじめ”に取り組んだ意欲作。
ストリー自体は往年の『中学生日記』やかつて”道徳の時間”に見た 教育テレビを彷彿とさせますが、苛めに立ち向かう手段として剣道が用いられたり、さりげない台詞にも森田節が効いています。

以前、トーク番組で「森田作品にはもれなく京本政樹がついてきます」と自ら明言されたとおり、この作品にも多忙な合間を縫って しっかりと友情出演。そんな義理堅い京本さんが演じたのは、誠風学園の教師・下村。
モリケンさんの血を引く熱血ぶりで、いじめをカッコよく解決、と思いきやその全く逆。ゆかりにななえの傷害事件を告発して もらうことで手を焼く生徒=ななえを厄介払いしようとする、ちょっとというかかなり困った、でもこういう先生意外と多いんだよなー、 という役どころ。
ダークグリーンのジャケットにノーネクタイでグレーのシャツのボタンを2番目まで外した下村先生。
語る台詞の内容は情けないけれど、見てくれはやはりカッコイイ。ななえを手招きする仕草や、「おい、入れ」という口調が 京本さんらしく、また、あーこういう先生いるいると思わずにはいられない説得力があります。
出番は3分足らずですが、意外と台詞が多いのがファンとしては嬉しいところ。贅沢を言えば、最後にもう一度顔見せ してほしかった、という気もしますがそこは友情出演ということで我慢です。

京本さんの出番は少ないですが、お堅い内容でありながら、硬くなりすぎず、くだけすぎずの展開でなかなか楽しめます。個人的には、かつて「愛さずにいられない」で 見せた苛め役が鮮烈な印象だった田村さんの明るく頑張る姿と笑顔に、いい意味でイメージがかなり変わりました。br> また、当時2歳にして歌手デビューした石坂みきちゃんが、パン屋の娘・みき役で大人顔負けの演技と愛らしい歌を 披露する姿も密かな見所です。

実際にはドラマのようにそんなに上手くいかないよ、と思いつつも、現実の社会では何かと辛いことが多いからこそ、たまにはこういう作品を見て 気持ちだけでも前向きになるのもいいな、と思わせてくれる作品です。

1999年6月12日

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