● スキャンダルを追え!  ●

壊れてしまった関係をとある出来事がきっかけで、ぎこちないながらも取り戻していく父と子の姿を通し、現代人が抱える孤独と脱出を描いた、ちょっぴりほろ苦い人間ドラマ。
原作は永倉万治氏の短編集『みんなアフリカ』(1989年・講談社刊)。


カメラマンの加藤栄吉(水谷豊)は、元は報道カメラマンとして活躍していたが、取材のあり方をめぐりトラブルを起こしたことがきっかけで退職。今は写真週刊誌のカメラマンとして ロックバンドでデビューを目指している安田(金山一彦)を助手にスキャンダル写真を狙う日々。
そんな加藤の元に2年前に別れた妻・石井京子(中田喜子)から連絡が入り、夏休みに息子の浩をキャンプに連れて行ってほしいと頼まれる。
奥多摩、山中湖、富士五湖など近場のキャンプを思い描く加藤に、安田は自分ならアフリカだと言う。突拍子もない提案に思えたが、当の浩の希望も 意外なことにアフリカだった。星を眺めるのが好きな浩は、東京には星がなくアフリカなら沢山見ることができるから、というのだ。

俳優・神谷慎一の恋人とのデート写真を狙っていた加藤は、ようやく掴んだ絶好のシャッターチャンスに少しでもいい写真を狙うあまり被写体に接近しすぎ、 激昂した神谷に大事なカメラを奪われそうになり逆上。神谷を殴りつけてしまう。
これ以上ないほどのスクープ写真を撮ったものの、神谷の告訴を恐れた編集長(ヨネスケ)は加藤の 解雇を宣言。宙に浮いてしまった写真を安田は他社に売り込め、とけしかけるが気乗りしない加藤は悩んだ挙句、神谷の交際相手である小林久美子(芳本美代子)に返却。
これをきっかけに久美子と加藤の友情にも似た奇妙な関係がスタートする。

出版社を解雇された加藤は、馴染みの探偵事務所の田島から浮気の証拠写真を撮る仕事を依頼される。 田島の依頼とは、日本建設財団理事長・大野幸太郎(根上淳)の令夫人・君枝(芦川よしみ)と君枝が通うホストクラブのホスト・工藤みつお(京本政樹)との密会写真を 撮ること。 あまり気乗りしない仕事だったが、自分とアフリカに行くのを楽しみしている浩の為、破格の報酬で 引き受けることに。
早速、証拠写真を撮るべく君枝に張り付く加藤だったが、尾行されたり部屋が荒らされる事態が発生。その一方で、久美子に渡したはずの神谷のスクープ写真が写真誌に掲載され、 悲観した久美子が自殺を図るが、寸でのところで加藤に止められ未遂に終わった。久美子はもう一度自分を見つめなおす為、アフリカへと旅立つ。

ある日、仕事を終えた帰りに何者かに襲われた加藤は通りかかった青年に助けられる。傷ついた加藤を手当てしてくれたその青年は、なんと彼が狙っていた相手—工藤みつお—その人だった。


兄と慕う水谷豊さんとデビュー以来の共演、となったこの作品で 京本さんが演じたのは、ホストの工藤みつお。やり手で常に店のベスト3に入る売れっ子ホスト。
明るいベージュやバックに華麗な模様の入った黒のシャツをさらりと着こなし、オールバック気味に前髪をあげ、サイドは横に流し耳を出したヘアースタイルがいかにもホストらしさを 感じさせますが、全体的にすっきりとした爽やかな印象を受けます。
売れっ子を自認するだけあって、かなりドライでスカした男かと思いきや、自身や仕事に関して幾分醒めた目で見ながらも、加藤と浩のことを思い 自ら悪役を買って出る優しい一面も。
そして君枝との関係もホストと客、という割り切ったものだったはずが、実は純愛で相手のことを考え 自ら別れるように仕向けたものの、別れの辛さを噛み締める、というクールになり切れない優しさを秘めています。
どのシーンも見どころですが、工藤の部屋で助けた相手がスクープを狙っていた、とわかった瞬間、まいったなという風に笑いあった後、工藤はげんこつで加藤の肩を、 それに対して加藤はポンポンと軽く背中を叩くシーンは必見。言葉ではなく絶妙な、らしい仕草でそれぞれの気持ちを見事に表現しているのにニヤリとさせられます。
またこの一連のシーンでは、ソファーに凭れかかりながら、何とも言えない色っぽい表情が沢山見られるのも美味しいポイントです。

ゴンチチの演奏する、ほんのり不思議で軽快なメロディーが心地よく、清々しさとほろ苦さが入り混じった結末に作品のキーワードであるアフリカにふらりと思いを寄せてしまいたくなるような、 奇妙な心地よさが残る作品です。

尚、芳本美代子さんと金山一彦さんはこの作品での共演がご縁となり、5年後の1996年に結婚されています。

1991年7月15日

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