● 京都マル秘指令ザ・新撰組  ●

1984年に朝日放送系でひっそりと放映されたこの作品は、京本さんが『必殺仕事人V』に出るきっかけとなったといういわば影の出世作です。が、あまりにマニアックな内容が災いしてか、当時人気を博すには至らず、その後地上波では再放送も殆どされない、という知る人ぞ知る幻の作品です。


時は現代。このところ日本が誇る古都・京都に異変が。京都マフィアなる悪の組織が暗躍し、京都の街を混乱に陥れるも警察は当てにならず、市民は戸惑うばかり。そんな京都を自分達の手で守ろう!と立ち上がった一団、その名も”昭和の新撰組”。御前なる人物の指令の元、集められた6人の男女。彼らは己が新撰組であることをひた隠し、普段はそれぞれの稼業に明け暮れつつ、京都マフィアの陰謀を阻止するべく日夜任務に励む。♪賀茂の河原に千鳥が騒ぐ♪いざ、覚悟。京の街に今日も新撰組が行く。

新撰組をモチーフに殺しこそ行わないものの、必殺仕事人をそのまま現代にもってきたようなこの作品。スタッフはもちろん敵対する京都マフィアのメンバー、毎回のゲスト出演者にも、あれ?この人確か仕事人で……という役者さんが揃います。
出演者は新撰組のリーダー土方に古谷一行、局長に横山ノック、永倉にガッツ石松、唯一、御前とつながりを持つ女将に春川ますみ、その娘・一子に甲斐智枝美、という何とも濃ゆ〜いメンバー。その中で京本さんは普段はアクセサリーを製造・販売している青年・沖田役を演じています。

話の筋としては色々突っ込みどころ満載な荒唐無稽なモノが多いのですが、そこは登場人物のパワーで押し切れば大丈夫(笑)。個人的に横山ノック・ガッツ石松コンビの名(迷?)演技は必見です。
そして、このドラマの最大の見どころは何と言ってもコレ。
それは、毎回京本さんの華麗なアクションが拝める!ことです。
時代劇では華麗な殺陣を披露してくれる京様の、現代劇での派手なアクション。これは貴重です。
後年の「Gメン’75スペシャル」でもアクション俳優としての魅力を堪能できますが、こちらは何と言っても若さ溢れる初々しい京本さんの、という特典つきです。
中型バイクを颯爽と乗りこなし、黒い革ジャンのスーツと同じく黒皮の指なし手袋でバッチリ決めた京本さんが、「あちょ〜」という奇声とともに(笑)、スラリとした手足を軽快な動きで繰り出す様は、普通に見てめちゃくちゃカッコイイ!!しかもやたらと強いときているのですから、これはファンにはたまりません。
あの「高校教師」を筆頭に、とにかく殴られ役が多い京本さんがこれでもか、と相手にパンチや蹴りを食らわすシーンは今見てもかなり新鮮です。
更にカンフー技だけでなく、時には木の枝にぶら下がり、下にいる相手の首を足で締め上げるという荒業も披露してくれるサービスぶり。

そして、もうひとつの特筆すべき点は、この作品で京本さん演じる沖田は敢えて美青年として描かれていない、ということです。
もちろんあの沖田総司を想定した役、という時点で美形であることは視聴者の頭に植え付けられています。が、本編中に沖田の容姿に関する発言が一度も出てこないのです。気が短い熱血漢だという描写はしばしば出てくるのに。とある回では任務で一子とラブホテルに行くことになり、若い2人がその気になってしまうのでは?と心配するオジサン達をよそに、「いいホテルだけど相手が沖田クンじゃ…」という発言までされてしまう始末。

沖田はとにかく喜怒哀楽を表に出す人物でよく笑い、怒り、時にはおどけてみせたり、仕事の失敗に落ち込んでみたりすることも。「箱入り娘には興味はねぇな」などとうそぶく割には、仕事でデートまで覗き見せねばならない自分に罪悪感を感じるなんて初心な部分があったり。そして何だかんだと悪態をつきつつも、他のメンバー同様、仲間のことをとても大切に思い、別れのシーンではともに涙を流す純な一面すら見せてくれます。
そこにいるのはクールでニヒルな凄腕の美形キャラでも、歪んだ性格異常者でもなく、1984年当時における現代の若者らしい、一見ちょっとひねた印象を持つ等身大の青年を演じる京本さんなのです。

今ではすっかり個性派俳優として名を馳せている京本さんですが、若かりし頃はこんなお茶目な青年を演じていたこともあったのだな、と思うと何だか微笑ましいです。と同時に、たまにはこういう等身大の人間味溢れる役や派手なアクションを披露する京本さんをまた見たい、と痛切に思います。



主要キャスト
土方一也古谷一行斉藤一子甲斐智枝美
永倉岩夫ガッツ石松斉藤美雪春川ますみ
沖田信介京本政樹松平(御前)池部 良
山田 勇横山ノック

1984年2月17日〜5月18日

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