●  ニュース速報は流れた ●

CS放送のプレミアムチャンネルとして、その1番組のためだけにお金を払っても惜しくない、そう思わせるだけのコンテンツを目指し2009年4月に開局した「フジテレビNEXT」。その目玉として、2009年11月18日より10回にわたり隔週水曜日に放送された開局記念連続ドラマ「ニュース速報は流れた」。

人間関係うずまくテレビ局報道センター。
そこから流れた一本の速報。
時を同じくして800q離れた北海道室蘭市で発見された死体―。
この二つをつなぐなぞの携帯メール―。

一度ではその真相にたどり着くことはできない。
二度、三度繰り返し見るうちに、あなたはこの事件の裏に隠された真実を知ることになる。

これはテレビ局報道センターの報道局フロアで起こってしまった事件を深夜発生時から 翌朝までの8時間にわたりほぼリアルタイムで描く、タイムサスペンスドラマです。

以上、太字部分は番組公式ページより引用


小林亮平(成宮寛貴)は東都テレビ報道部に勤務するAD。ある夜、彼の携帯に友人から「室蘭に核ミサイルが落ちた」という一通のメールが届く。
いたずらかと思ったが、念の為確認を取ろうとしたところ、何故か室蘭支局と連絡が取れず、同時に外回りの記者から外務大臣が首相官邸を訪れた、という連絡が入る。これは本当かもしれない、と 俄かに緊張の色を帯びるフロア。
実は、この日東都テレビはとある速報を流し損ねるという失態を演じており、もしこれが本物のニュースならとてつもない大スクープ。一気に朝の失敗を取り戻す チャンスとなる。着々と速報を流す準備を整え、副編集長の仲村(ARATA)が速報ボタンを押そうとしたその時、編集長・潮崎(小林薫)が現れ、再度確認を取るよう指示。ほどなく ガセネタであったことが判明。ほっと胸を撫で下ろす一同。
しかし、直後止めたはずの速報が流れてしまう。誰かが送信ボタンを押したのだ。
更に間が悪いことに、その速報を見て外に飛び出した室蘭市在住の男性が車にはねられ死亡する事件が発生。誤報を流した局に非難の電話やメールが殺到する。

誤報と知りながら速報を流した人間が部内にいる。一体誰が何のために?
事態を重く見た上層部は、報道部にコンプライアンス部門の相馬(萩原聖人)と内田(佐津川愛美)を派遣。たまたまこの日、システムトラブルの為ソフト会社から保守作業に来ていた SEの古賀(深沢敦)と速報を読む為にアナウンス部から来ていた柴田レイコ(酒井若菜)を含む関係者全員を軟禁し、犯人探しが始まる。

相馬達の取り調べに次第に各人が疑心暗鬼となり、次々とスタッフ達の知られざる人間関係や他人に知られたくない秘密、嘘が明らかに。 崩壊寸前の報道部に今度は防衛省と称する謎の男女、栗尾(加藤虎ノ介)と柳本(みさきゆう)が乗り込んで来る。彼らは執拗にあるものを 探しているらしい。恐怖と互いに対する猜疑心から混乱する部員達。だが、やがて、謎の二人組が探しているものは現職の大臣黒部に関するものだと知った彼らは一転。二人を出し抜いてファイルを入手しようと 連携し始める。

そして遂に明らかになる送信ボタンを押した人物。しかし、彼は面白半分で押したのではなく、とある目的の為に恣意的に押したのだ。その隠された思いとは、実の父親で ありながら彼と姉(同じ局内で働くアナウンサー)を捨てた大臣・黒部のスキャンダルを暴くこと。
というのも、彼の育ての親はかつて北海道のテレビ局の報道マンとして、 黒部の汚職疑惑を追及し、そのために殺されたのだ。
亮平達の働きにより、黒部の不正の証拠を掴んだのと同じくして、なんと黒部が翌朝の報道番組にやって来ることに。生放送で黒部の不正を暴いてやる!
一度はバラバラになりかけたスタッフたちの心に燃え盛る報道魂。初めて部内がひとつになったかに思えたその時、とんでもない第二の事件が発生。果たして真相は!?


この作品に京本さんはゲストとして4,5,7,8,9話の5回に渡り登場しました。京本さんが演じたのは、さる大物代議士と関係があるらしい謎の人物・白井哲也。ただし、登場シーンはなく電話でのやりとりのため 声のみの出演です。
ですが途中、犯人探しとこれまでのおさらいを兼ねて放送されたメイキングでは、京本さんが撮影にやって来たシーンが見られます。和やかでラフな雰囲気な中に京本さんらしい 仕草に頬が緩みます。
そんなリラックスした楽しい雰囲気とは裏腹に、演じた役柄は冷徹とは言わないまでも 潮崎編集長をあの手この手で意のままに操る謎の男。口調はソフトながら、時にねちっこく、脅しをかけたりと相手の痛いところを突く様は声だけながら存在感は充分。潮崎編集長を演じる小林薫さんとの 絶妙なやりとりで見せてくれます。
自称防衛省の栗尾とも繋がっている らしく、毎回どんぴしゃなタイミングで電話をかけてくる点からも室蘭で起きた事件を含め、全ての黒幕は実は 彼なのでは? と思わせるほど。
1話あたりの出演シーンは毎回数分程度ですが、全11話の約半分の5回に渡りに登場するのが嬉しい限りです。
全ての登場人物が怪し過ぎるこの作品に置いて、声だけであれほどの怪しさを見せつけたのはさすが。
果たして彼は本当に黒部の部下だったのか、それとも本当は陥れるために動いていたのか? 非常に興味をそそられる白井氏でしたが、結局のところ何だったのか 最後の最後まで明かされなかったのだけが少々心残りです。


限られた予算の中で従来のドラマにはない面白いものをいかに作るか。視聴者を裏切るドラマを作りたい、というコンセプトで製作された本作。
出演者の顔触れは新旧取り混ぜた豪華メンバーが揃い、普段の地上波では見られないような組合せと非常に丁寧に進行していくストーリーにぐいぐい惹き込まれ、 どんな些細なシーンも見逃すまい、と久々に画面に釘づけになったドラマでした。個性的な俳優陣が、それぞれの持ち味を発揮し、ひと癖もふた癖もある役柄を 見事に演じ切る様は見ごたえがあります。
個人的に当時この作品で初めて知った、副編集長を演じたARATAは必見。
隔週であるのがもどかしく、2週間が待ち遠しくなったドラマでしたが、最後の最後にあんな仕掛けをされたのは予想外でした。視聴者を裏切る、と製作者が語っては いましたが、当初の謎の解明ではなく突発的に起きた事件で終了、しかも真相は視聴者にお任せ(後日発売されたDVDの特典映像で明らかになりました)、とされるとは(苦笑)。
全11話と書きましたが、10話はなく(プロットのみで製作すらされなかったという)9話の次にいきなり11話、しかもバラバラに継ぎ直されたため、見ている側には何がなんだかわからないという、これまたおきて破りの展開でした。
このため最終話の放送直後には高い契約料を払ってこれか、がっかりした、との意見が多く出ましたがそれも仕方のないことでしょう。
個人的にも9話までは非常に面白かっただけに、この終わり方はさすがに残念でした。
ですが、悪辣商法はともかく(苦笑)、ドラマが詰まらなくなったと言われて久しい昨今、工夫次第でまだまだ面白い作品が作れることを 証明してくれた点は評価したいと思います。
また、結果的に非常に難解となってしまった最終話での小林薫と萩原聖人の見事すぎる演技は必見。これが見られただけで全ては良し、にはいくらなんでもなりませんが一見の価値アリです。


最後にこれからこの作品を見る方のために。レンタルでは特典映像はありません。京様ファンでわざわざDVDを購入してまで見よう、という方は少ないと思われるので。観終わった後にもやもやしないために強烈なネタバレを。最後に起きた事件の犯人は……相馬大輔  です。


主要キャスト
小林亮平成宮寛貴潮崎俊太郎小林 薫
仲村鷹彦ARATA向井 徹豊原功補
江川 均やべけんじ柴田レイコ酒井若菜
大山博嗣中丸新将古賀昭二深沢 敦
相馬大輔萩原聖人内田明恵佐津川愛美
栗尾良和加藤虎ノ介柳本清美みさきゆう

2009年11月18日〜2010年4月21日

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