●  サラリーマン金太郎 ●

1994年の掲載開始以来、幾度かの休載を挟みながら週刊ヤングジャンプに好評連載中のビジネス漫画『サラリーマン金太郎』(本宮ひろ志)。
1999年にTBS日曜劇場枠にて高橋克典主演でテレビドラマ化。大好評となり映画、翌年からはシリーズ化され、2004年の『サラリーマン金太郎4』まで 続き高橋克典の代名詞的な作品となりました。また、2001年にはアニメ化もされた人気作品を今度はテレビ朝日が深夜枠の金曜ナイトドラマ枠で再ドラマ化。
主役に永井大を起用し、新しい金太郎を目指してスタートした本作は初回視聴率が13.8%とこの枠では過去最高の初回視聴率を記録しました。


暴走族集団・八州連合の元ヘッド矢島金太郎は、サラリーマンを夢見て大手ゼネコン・ヤマト建設へ見習い社員として入社する。かつての仲間達の熱い声援を受け、 意気揚々と出社し社員達の度肝を抜いた金太郎が配属されたのは、社内からのリストラ要員が集められた営業四課。「サラリーマンをなめんじゃねぇ!」を信条に 張り切る金太郎の思いとは裏腹に、ヤマト建設は創業者である大和会長(宇津井健)と彼を慕う黒川専務(古谷一行)らの追い落としを図る大島社長(柴俊夫)の 一派に乗っ取られようとしていた。大島が仕組んだ役員会にて逆に大島を退陣に追い込むことに成功した大和会長は、黒川を後任社長に指名し再スタートを切る。
営業部員として会社再建に燃える金太郎だったが、持ち前の一本気な性格と気性の激しさが災いし様々な困難に直面する。また、黒川前社長一派による妨害も止むことはなく社内も揺れることに。それらをひとつひとつ乗り越え、 サラリーマンとして成長していく金太郎の耳に、今度はヤマト建設乗っ取りの噂が入ってくる。果たして金太郎は会社と大切な仲間達を救うことが出来るのか!?


あの人気作品が再びドラマ化される、ということで深夜枠ながら注目された本作。前作がゴールデンタイムということもあり、サラリーマン社会の厳しさとともにホームドラマ的な要素も 取り入れ、お茶の間で家族皆が楽しめる内容だったのに対し、今回は全体的にダークな部分をより強調したつくりになっています。主役の永井さんも爽やかさと破天荒なやんちゃぶりがいい感じに同居した、高橋版とは一味違った金太郎の魅力を伝えてくれます。
ただ、前作の高橋克典さん始め、ライバル鷹司役の保阪尚希さん、前田役の恵俊彰さん、田中役の勝村政信さんらあまりにも嵌り役の方が 多かったこともあり、どうしても全体的に小粒、放送回数の関係による駆け足感が否めないのが惜しまれます。

さて、初夏に放送された『ハチワンダイバー』へのゲスト出演以来、久々のドラマ出演となった京本さんが演じたのは、西淀橋商事に務める清本正敏。
ひょんなことから見初められた大日本製鉄社長・山下浩一郎(長谷川初範)から、会社の窮状を救うために金太郎が出した計画書には目玉が足りない、と指摘され目玉を探しバス停でバス待ちの行列に加わった金太郎。 と、そこへ割り込みをする若者達に苦言を呈し、ボコボコにされている冴えない中年男を救った金太郎。お礼にと連れて行かれた串揚げ屋で清本が何気なく語った言葉「何もかも東京に集められているせいで、人が皆殺気だっている」から ヒントを見つけ出し、遊休地に未来都市を建設することを思いつく。
冒頭からいつ登場するかと待つこと10分。「あのー」と聞き覚えのある声に、きたきたきた〜と画面に注目してびっくり!「あ、あのー」と口ごもりながらおずおずと若者に割り込みはいけないよ、と たしなめるオフホワイトがかったベージュのコートにエンジのマフラー、黄土色に近いベージュのチノパンを履き両手にケーキの箱を大事そうに抱えた猫背で丸眼鏡の見るからにうだつのあがらさそうな中年男が立っているではないですか。
思わず、こ、これは誰ですか〜?と言いたくなるような見事な変身ぶりに感心する間もなく、にこやかに笑った途端、いきなり横っ面を張られあえなく倒れこむ姿の鮮やかさにまたにんまり。しかし、その次にケーキの箱を足で踏み潰されてしまった 瞬間の表情はもっと必見。殴られた痛み以上に悲しそうに見開かれた目とあっという切羽詰った声には、甘いもの好きとして心からの同情を禁じえません。金太郎にぶっ飛ばされる若者をこわごわそーっと窺う表情や必死で飛んでいった眼鏡を探す仕草など、 どれをとってもこんな京本さん見たことない、という場面の連続です。続く串焼き屋でのオヤジ臭さ全開の愚痴吐きっぷりと併せ、僅か3分ほどでこんなにも美味しい気分を味わってもいいのか不安になってしまうほど。
そんないい意味での裏切りの連続な 清本氏ですが、最後の最後金太郎が去った後、やおら眼鏡を外し「いいか。こんなとこで」と呟く口調・表情はいつもの京本さんになっているのも視聴者には嬉しいお約束(?)です。

友情出演のためほんの僅か数分の登場でしたが。『ちりとてちん』で見せた演技の懐の深さが、お茶の間のみならず 作り手側にも浸透し、ここにきて新たな方向へと花開きつつあるような、そんな嬉しい印象も受けた今回の出演でした。

しかし、この台詞と顔、もしかして実は鍵を握る重要人物なのでは?という期待を抱かずにはいられない思わせぶりっぷり。次週の登場も含め、今後の役者としての活躍がますます楽しみです。

2008年12月5日

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