”フレネミー”。あまり聞き慣れない言葉ですが、友を表す"FRIEND"と敵を表す"ENEMY"を合わせた造語で、文字通り友達の顔をした敵、という恐ろしくも迷惑な人を表す言葉として
アメリカで1990年代以降、映画やドラマで取り上げられたことをきっかけに広がるようになりました。
日本でも近年、雑誌などで取り上げられたりして、急速にその存在が知られるようになってきています。
そんな身近にいると何かと面倒そうなフレネミーを題材にEXILEのSHOKICHI&NAOTOのW主演でドラマ化したのが今回の作品です。
当初日本テレビのみの関東ローカルでの放映でしたが、約1ヶ月遅れで読売テレビでの放映も開始、東西両ローカルでのOAとなりました。
森下夏生(SHOKICHI)は幼い頃に両親を亡くし、親戚に引き取られたが折り合いがつかず15歳で家を飛び出して以来、転落した人生を送っていたところを小暮グループ会長、小暮真一(神保悟志)に拾われる。小暮の下で3年間修行を重ねた
夏生は、ある日小暮から彼が大事にしている「ナイトサロン Venus」の店長に就くよう言い渡される。
先にこの店で働いていた黒服連中は、突然素人同然の夏生が現れたことに不快感を隠さず夏生に暴行を働く。しかし、夏生には幼い頃に行き別れた妹・香澄(荒井萌)に送金をする、という
強い信念があり、小暮や部下たちからどんな扱いを受けても甘んじてきていた。
夏生が店長に赴任して間もなく、1人の若い男が働きたいとやってくる。拒む夏生にリストラに遭い、生活のためにどうしてもと懇願する相手は、なんと幼少時に暮らした団地で唯一の友と呼べる
存在であった岡嶋渉(NAOTO)だった。
心底、夏生との再会を喜んでいる様子の渉に夏生も次第に頑なだった心がほぐれ始めて来たある日、小暮グループの一員である北見(直江喜一)が経営する裏カジノが警察に摘発されてしまう。
裏カジノの存在及び顧客の管理方法を数日前に「Venus」で北見が話していたことから、小暮は当日店にいたものの中に囮捜査官=どぶねずみが紛れこんでいると睨み、
徹底的に調査を開始する。
やがて、仲間達の証言から渉がどぶねずみではないか、という疑念が夏生の中に芽生え始める。時を同じくして、徐々に小暮グループの中で渉は頭角を現し始め、
遂には夏生に代わり店長を任されるようになる。変わらず、お前は親友だと言う渉が次第に信じられなくなる夏生。
果たして渉は本当に友人なのか、それとも敵なのか……。
京本さんはこの作品に特別出演として2話から登場し、久しぶりに狂気に満ち溢れた姿を始め、見どころ盛りだくさんのかなり美味しい役どころでした。
京本さんが演じたのは、小暮と昔から繋がりがある、風間ホールディングスの会長・風間貞男。
様々な事業で大成功を収める一方で、孤児院への慰問を長年続けている篤志家の面も持つ風間会長。
取材で「あらゆる不幸から人間を救いたい。幸せに満ちた愛に満ちた社会を作りたい」と福祉にかける幼い頃からの夢を語るも、あまりに歯の浮くような台詞が仇になったのか、取材にあたったフリージャーナリスト・城ヶ崎に「うさんくせぇんだよ、あの顔。調べてみるか……」と逆に
疑念を持つきっかけを与えてしまうことに。
そんな胡散臭さ全開の会長ですが、大企業の会長という肩書に相応しく濃紺のスーツにネクタイを締め、胸には白いポケットチーフという絵にかいたようなスタイリッシュさが素敵です。ほぼ毎回のように
ビジネススタイルでの登場ですが、時にさらっとネクタイが緩められていたり、上着を脱いで着崩していたり眼鏡があったりなかったりetc.バリエーション豊かなのが嬉しい限りです。
ちなみに当初の設定では風間会長は62歳となっていたため、京本さんが62歳の会長役を!? と一部で話題になりましたが、京本さんの出演が決まった段階で風間会長の
設定も京本さんの年齢に修正されたそうです。
そんな会長の見どころは、まずは何と言っても孤児院の慰問時に毎回のように披露する手品。以前、「北ホテルV」にマジシャンに見せかけた探偵役を演じた際に、練習を積み会得した技術がが再び
見られようとは。より一層磨きがかかったマジシャンぶりに注目です。個人的に卵から鶏に変わる手品で、鶏を取り出して「産まれちゃった」とおどけたり、空になった筒に手を入れて「卵? ないねぇ」と
園児達に呼びかけるシーンのお茶目っぷりは必見です。
何度か登場するマジシャン風間ですが、孤児院での会長は普段より声のトーンを低く太めなのも聞き逃せないポイントです。
さて、序盤から中盤は小暮相手に怪しげな賭けを楽しみ、悪魔の微笑でいかがわしさを振りまきつつも、あくまで紳士な実業家に徹していた風間会長でしたが、囚われの鮫島へのロシアンルーレットを
見物する仮面パーティからはこれまでの仮面をかなぐり捨て、狂気の本性(?)を曝け出します。
仮面パーティーの開始直前、夏生が聞いているとも知らず、小暮といつものように夏生の命についての賭けの話をするのですが、この時顔の半分がマスクで覆われているため、会長の表情は見えないのですが、
仮面の隙間から除く瞳と唯一晒されている口元に浮かんだ笑みが、恐ろしいほどに酷薄で彼の狂気をまざまざと見せつけてくれます。
仮面パーティーの後、夏生が行方をくらましたことから、一気に精神のバランスが崩れてしまったのか、回を重ねるごとに狂気が正気を覆い尽くして行き、小暮にまで「狂っている」と
言わしめた会長の狂気は最終回で遂に頂点に達します。
夏生と渉に捕まり、鮫島に代わり囚われの身となった風間会長。昔から殴られっぷりや、キレっぷりには他者の追随を許さないほどの凄みを見せてくれる京本さんですが、
今回も期待を裏切ることなく、否、それ以上の渾身の狂気に満ちた姿を披露してくれます。アップになった際の瞬きひとつしない狂いきった表情もお薦めですが。
個人的には何度も映し出される後ろからのアングル、頭の動きと髪の揺れによる狂い咲きサンダーロード状態な後ろ頭の演技にゾクリとさせられました。
どぶねずみの街の副題が表すとおり、裏社会を舞台にした設定のため、暴力的なシーンも多く、思わず目をそむけたくなるシーンもあったりしますが、
毎回この先どうなるのだろう? これはどういうこと!? と続きが気になるストーリーに引き込まれ、最後まで飽きることなく楽しむことができます。
主役の二人の好対照な熱演はもちろん、1匹目のどぶねずみ、鮫島のやさぐれ風味なカッコ良さも隠れた見どころのひとつです。もう10歳若ければ、鮫島を演じる
京本さんというのも見てみたかったり(笑)。
また、”腐ったミカン”で一世を風靡した加藤優こと直江喜一さんが、小暮の部下・北見役で登場し、元気な姿を見せてくれているのも、中年以上の視聴者には
嬉しいサプライズです。
尚、この作品は2013年12月にDVDがリリースされます。特典映像に会長は登場するのか、夏生と渉のその後は明かされるのか? そちらも楽しみです。
主要キャスト |
森下夏生 | SHOKICHI | | 岡嶋 渉 | NAOTO |
小暮真一 | 神保悟志 | | 鮫島 | 虎牙光揮 |
北見 | 直江喜一 | | ルナ | 坂田梨香子 |
森下香澄 | 新井 萌 | | 矢崎百合恵 | 音月 桂 |
城ヶ崎健一 | 山下健二郎 | | 風間貞男 | 京本政樹 |