●  アンタッチャブル〜事件記者・鳴海遼子〜 ●

仕事にも恋にもあつかましい粘着質の女性記者が事件の裏に隠された真実を解き明かすミステリー。
疑惑と裏切り、巨大組織の陰謀、命を賭けた心理戦、意表をつくどんでん返し…。サスペンスの醍醐味に特異なキャラクターの面白味をプラス した新タイプのミステリー(以上、公式サイトより)と銘打ち、朝日放送が制作した『アンタッチャブル〜事件記者・鳴海遼子〜』。


とある事情でかつて所属していた一流週刊誌『国民ジャーナル』を追われた鳴海遼子(仲間由紀恵)は、三流紙『週刊アンタッチャブル』編集部に拾われる。書いてる雑誌は三流だが心は一流をモットーに、真実を明らかにし、記事にすることこそがジャーナリズムとの信念のもと、「またお会いしちゃいましたね」と ターゲットをしつこく追い回し、場の空気が著しく読めない彼女に相棒として連れ回されるカメラマン・鷹藤(佐藤智仁)ら編集部も手を焼いていた。
ある日、”名なしの権兵衛”と名乗る謎の人物から報道ジャーナリスト・有栖川スミレ(浅野ゆう子)の密会写真とともに彼女を調べるように、との指令が編集部に届く。指令に従いスミレを調べていくうちに、恐るべき事実に突き当たった遼子はアンタッチャブル誌上にて発表。雑誌は飛ぶように売れるが、この事件をきっかけに 編集部にはたびたび”名なしの権兵衛”からの謎のメッセージが届くとともに、遼子の周囲で奇怪な恐ろしい事件が頻発する幕開けだった。
危険を顧みず真実を突き止めようとする遼子を警視庁公安部に所属する兄・洸至(小澤征悦)は心配するが、遼子の熱意に負け次第に協力するようになる。名なしの権兵衛とは一体何者なのか?次々と引き起こされる事件は、次第に遼子の 周囲の人間をも巻き込んでいき……。


主役に仲間由紀恵を据え、小澤征悦、佐藤智仁、寺島進、要潤らの個性的なレギュラー陣を据え、初回スペシャルの浅野ゆう子を皮切りに、京本政樹、高橋ひとみ、六平直政、原田龍二、中村獅童、雛形あきこ、川上麻衣子、荻野目慶子、長谷川初範といった毎回豪華ゲスト が巻き起こす(巻き込まれる)事件が事件を呼ぶ展開に、主要登場人物すべてが怪しく思え、黒幕は誰だ、名無しの権兵衛の正体は?と否応なく視聴者を煽り、惹きこんだものの、最終的には広げ過ぎた風呂敷の回収に失敗。
中堅〜ベテランの多彩なゲスト陣が、それぞれらしい役柄を見事に演じる一方で、安易にバタバタと人を殺すこと=視聴者を引き付ける、と勘違いしたとしか思えない支離滅裂な筋書きに走った挙句、ご都合主義のラストにトホホホホというよくある最悪なパターンに終わってしまったのが 悔やまれます。
相当辛辣になりますが、正直、ラストの方は途中でタイアップ挿入される、個性的な編集部総出演のCMの方がよほど面白かったくらいでした。


さて、京本さんは相島一之さんとともに第二話「盗作し合う二人の作家」にゲストとして出演。滅多に見られない貴重シーンを含めた圧倒的な存在感を見せつけてくれています。 第二話の簡単なストーリーを紹介すると。

互いによき友・ライバルと認め合うベストセラー作家・芥川春彦(京本政樹)と夏目龍堂(相島一之)が同日発売した新作は『闇夜のカーニバル』という同名・同内容の小説だった!?
すわ盗作か、と騒がれたことも手伝い、文体のみが違うこの2冊はどちらも過去最高の売上を記録する。芥川ファンの遼子と夏目ファンである同僚の美鈴(芦名星)は互いに、先生が盗作するはずがない、とそれぞれの作家の無実を証明するべく取材攻勢を開始する。
そんなある日、編集部に「太宰瞳作 闇夜のカーニバル」と書かれた手書きのコピーが届けられる。差出人の山形大学の吉行(若葉竜也)によると、この作品は同じサークルに所属する太宰瞳が書いたものだという。
早速吉行という学生を訪ね、山形大学へと出向いた遼子と鷹藤は、そこで国民ジャーナルの遠山(要潤)に同行する美鈴と鉢合わせする。すったもんだの末、4人での同時取材に応じた吉行は、瞳は「傑作長編が書けたから尊敬する大作家先生に読んでもらう」と原稿を携え上京し、その尊敬する 作家とは芥川と夏目であることを告げる。更にその後事故死した瞳は彼らのどちらかに突き落とされたのではないか、とも。

やがて、美鈴の誘惑に負けた夏目は盗作したことを発表する。それを知った芥川は激しく動揺し、遂に遼子に真実を告白し、社会派ジャーナリストとして出直すことを誓ったのだが……。


この作品で京本さんが演じたのは上に紹介したとおり、社会派サスペンスの巨匠・芥川春彦。相島さん演ずる夏目龍堂、不幸にして事件に巻き込まれた太宰瞳、吉行周作同様、かなり微妙な役名ですが、そのあたりの突っ込みどころをあげると キリがなさすぎるくらい、全作通して穴だらけの内容なのでそこはさらっと流しましょう(^^ゞ。
冒頭から濃緑青の着流し姿で取材陣に囲まれたその背後には、出版社ビルかかった美麗な顔写真入りの巨大な垂れ幕、という何とも美味しいシチュエーションでの登場となった芥川先生。現代劇なのに着流し、と嬉しい驚きを軽く吹き飛ばしたのが 次のプールでのシーン。何しろ、旅番組などでも決して温泉に入らないことで有名(?)な京本さんがプール!?とそれだけでも仰天なのに、海パン姿で水泳を披露、と終盤での芥川の台詞「水泳は無防備すぎる」を体現するシーンの数々に度肝を抜かれます。その後は、濡れた髪の乱れっぷりも そのままに白いバスローブ姿でくつろぐ、というオマケつき。
そんな美味しすぎるシーンで幕を開けた芥川先生は、その後も着流し姿と様々な表情でもって魅了してくれます。中でも早朝、朝刊を取りに来たところを遼子に襲撃されるシーンでは、短い間にこれでもか、と目まぐるしく変わる表情の多彩さに改めて注目です。 その後も芥川邸での相変わらず美しすぎる座姿や、時代劇さながらの所作の美しさ等、憂いを含んだ表情ともども、京本さんらしい拘りが随所に窺えるのも嬉しい部分です。
また、ラスト近くで遼子に真実を告げるシーンでは、一転して晴れやかな 笑顔が見られるのに加え、ファンにはお馴染みの肩叩きも披露。そして、ラストはまさかの美麗すぎる死に顔、と最初から最後まで京本政樹ここにあり、という存在感でした。

この作品は初回から、あれこれ様々な伏線を張り巡らし、ちょっとした小道具にも小技を利かせるのが特徴のひとつでしたが、この2話でも芥川家の書斎に見ざる、言わざる、聞かざるの3体が飾られています。
ドラマそのものは、上にも書いたようにこれはあんまりだ、というモノですが、第二話の頃はまだそこまで酷くはなく。意外と見どころ満載なのが救いです。

しかし、ほぼ100%に近い確率でお亡くなりとさせられてしまった豪華ゲスト陣。納得はできないものの、それぞれの死が 結末に何らかの繋がりがあるのに対し、この2話の芥川、夏目両先生だけは、何故死ぬ必要があったのか非常に疑問が残ります。

2009年10月23日

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