●● ハチワンダイバー ●●
週刊ヤングジャンプ好評連載中の将棋バトル漫画『ハチワンダイバー』(柴田ヨクサル作)。かつてプロ棋士をめざしていた菅田健太郎が失意の日々の中、女真剣師「アキバの受け師」に惨敗したことをきっかけに、彼女に導かれるまま凄腕真剣師達との勝負
を重ね真剣師としての道を究めていく姿を描いた人気作品。それをフジテレビがドラマ化、主役に初主演となるジュノンボーイ出身の溝端淳平を抜擢。サンドウィッチマンや木下優樹奈らドラマ初出演となる若手に毎回豪華ゲストとが登場し、平均視聴率8.4%と深夜枠としてはまずまずの数字を残しました。
菅田健太郎(溝端淳平)はプロ棋士になる夢破れ、賭け将棋を生業とする真剣師として名を挙げていた。向かうところ敵なしだった健太郎は、ある日どんな金額でも相手にする、という女受け師・中静そよ(仲里依紗)と対戦し負けてしまう。
傷心のまま帰宅後、清掃の出張代行サービスを頼んだ健太郎は、現れた相手を見て愕然とする。というのも、メイド服姿で現れたセクシーな女性がそよにそっくりだったからだ。
みるくと名乗るその女は最初は否定したが、健太郎の全財産をかけ再び対局したその姿はやはりアキバの受け師そのものだった。
そよとの対戦で全財産を失った健太郎は、大事な駒を質に入れそれを取り戻すべく、大金を賭けて臨んだ真剣師・飛鷹安雄(富澤たけし)との対局で将棋盤の中へダイブする、という不思議な体験により勝利を収める。しかし、これを皮切りに賭博へと手を染め、遂にはマムシ(姜暢雄)との対局中に警察へと連行されてしまう。
証拠不十分で不起訴となった傷心の健太郎の前に、そよが再び現れこれからは金ではなく命の次に大切なものを賭けて3人の真剣師と戦ってもらうと告げられる。
そよに導かれるまま、伝説の男・二こ神(大杉漣)、売れっ子漫画家・文字山ジロー(劇団ひとり)と対局し、対局ごとに将棋の奥深さ、凄まじさを実感していく健太郎。そんな折、ひょんなことからアパートの隣人・六車里花(安田美沙子)が小学校時代の同級生であると気づく。そのことを里花に告げると、今頃気づいたのかとなじられた揚句、現在の健太郎の状況を罵倒され落ち込んだまま次の対局へと向かう。
いつものように秋葉原道場へとやってきた健太郎の前に臨時休業の張り紙が。休み?と問えばなんと貸切だという。しかも代金も対戦相手が支払い済。訝しむ健太郎の前に白マントの超美形の男が現れる。斬野と名乗ったその男は、「僕が勝ったらみるくさんをもらいます」という衝撃の台詞を口にする。動揺する健太郎をよそに淡々と打ち始める斬野。
しかも、その対局の様子はみさき(木下優樹菜)が密かに仕掛けたカメラにより、誰かに送られていた。
そよへの思いから対局に集中できない健太郎に冷酷ともいえる落ち着き払った態度で駒を進めていく斬野。「早石田流三間飛車」という師匠・鈴木(小日向文世)が復活させた手を目の当たりにし、打つ手のない健太郎はダイブを
試みるが失敗。その後もなすすべもなく敗れ去った健太郎に、「これで、みるくさんは僕のものです」と宣言しそよを連れ去る斬野。がっくりとうなだれる健太郎。連れ去られたそよの運命は、健太郎は再び立ち上がることが出来るのか!?
この作品で京本さんが演じたのは、3人目の真剣師・斬野シト。4話の予告で「僕より美しい」と紹介されたとおり、黒のカットソーの上に黒と白のチェックのシャツを重ね、その上に真っ白なマントを羽織り、斜めにたらされた相手を前髪の影から冷たく射抜く鋭い眼光は
見る者を圧倒する妖しい美しさに溢れています。
ニこ神、文字山と過去2人の真剣師が全身に熱さを漲らせていた熱血漢だったのに対し、常に沈着冷静、抑えた口調の斬野は対局中も淡々とした、という印象を受けます。しかし、静かな手とは裏腹に鋭く相手の懐を抉っていく戦法は
残酷極まりなく。そよをして「これまでの2人より強い」と言わしめた腕の持ち主であることを裏付けます。
「ちりとてちん」の小次郎に京本さんの新しい一面を見たスタッフが、是非にと持ちかけたことから実現した今回の出演。クールな役どころはこれまでと同じと思いきや、今まで見たことがない演技で楽しませてくれています。
原作が漫画ということで、一応作品に目を通しながらも原作に囚われず、自分なりの斬野を目指しつつ、唯一本当の将棋ではやらない仕草だけはしないよう心がけたという京本さん。全身に妖しげな雰囲気を漂わせながらも、すっと駒を指す手の自然な動きに注目です。
辛辣な台詞を次々と吐きながらも、どこかとぼけた色が漂う斬野。あまり口を動かさずに発せられる普段よりかなり抑えた口調が、とぼけているのに何ともいえない凄味があり、いつも以上に存在感を際立たせます。
また、この作品では、とりわけ目のアップが多いのも嬉しい特徴のひとつ。眼は口ほどにモノを言うのごとく、余計なことを言わない代わりに薄紫がかったグレーのカラーコンタクトの威力に思わず吸い込まれそうになってしまいます。
しかし、その一方でいつも以上に過酷な撮影を象徴するかのように、時折アップになった京本さん、溝端さん2人の目が真っ赤に充血しているのが見て取れるシーンも。
そんな迫力満点の目が、みるくさん人形を欲しいと頼む健太郎に、「だめ」とにべもなく告げるその瞬間、とてつもなく悪戯っぽく見開かれるのが何とも言えない快感。そのまま早く対局に入ろう、とばかりに椅子を引く口元が微かに笑っているのと合わせて見逃せません。
他にも、再戦で健太郎が賭けるモノを聞いた瞬間のあきれ果てた声と表情や、「お互い大嵐に巻き込まれるぞ」と告げた時の嬉しさが滲み出た目のアップ、そして何といっても鬼将会の名を聞いた途端に見せたうろたえた様子など、細かな部分にも嬉しいポイントがいっぱいで気が抜けません。
また、演技だけでなく設定そのものでも度肝を抜かせてくれた嬉しい一面も。みるくとの関係を聞かれ、「ある時は主人とメイド」と告げたシーン。健太郎ならずとも、この斬野がみるくさんとご主人様ごっこ!?とあらぬ想像してしまった視聴者は多いはず(笑)。更に翌週、斬野の本業とみるくさんが彼のモノになる、という
意味を明かされ、日頃の京本さんのもうひとつの本業(?)を重ね合わせた人もまた多いことでしょう。この辺り、京本さんの多面性を上手く連動させた作り手の遊び心が窺われ、ニヤリとさせられます。
短い出演ながら、意外とどころか大いに見どころ満載だった斬野シト。数々のいい意味での衝撃の中でも、とりわけ5話のラスト、次週予告の最後で見せた不意打ちの微笑みが最強でした、ということで筆を置きたいと思います。
2008年5月31日、6月14日、6月21日
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