● 里見八犬伝  ●

滝沢馬琴の古典「南総・里見八犬伝」の世界を脚本家・鎌田敏夫氏が現代風にアレンジ。
構想10年「復活」以来の超大作、との触れ込みで当時の角川映画の秘蔵っ子であった薬師丸ひろ子、真田広之主演で製作されたこの作品は、SFXを駆使した時代劇として公開前からメディアにも数多く取り上げられ大ヒット。その後、ビデオやDVD化もされ未だに根強い人気を誇っています。
斬新かつぐいぐい引き込まれるストーリーの面白さはもとより、派手で迫力満点なアクションや大掛かりな特撮、特殊メイクなど当時はもちろん、今見てもその完成度の高さにはびっくりです。

この作品で京本さんが演じたのは八犬士の一人、犬塚信乃。
滝沢版では主役の信乃ですが、この映画ではちょっと気性の激しい若き剣の達人といった役どころ。
当時人気絶頂だった真田広之さんを始めとするJACの面々やベテラン勢を相手に、こちらが思わず息を呑んでしまうほどの美しさと強烈な存在感でもって最初から最後まで魅せてくれます。
数ある見どころの中でも、特に印象的なのが冒頭の登場シーン。
烏帽子姿も凛々しく、妹・浜路の婚儀を前に憂い顔で唇を引き結び佇む姿は、「どこから見ても美しい」この一語に尽きます。続く桜吹雪が舞い散る中での婚礼シーンでは、真剣な表情で鼓を打つ姿から派手な大立ち回りまで見ごたえたっぷりで、どんな些細な動き・表情も見逃すまいと気が抜けません。
また、ストーリーの展開上、随所で馬を駆る姿や激しい立ち回りが見られるのが何とも嬉しい限り。中でも2度に渡る犬塚毛野役の志穂美悦子さんとの殺陣は、切れのある動きにお互いの美しさがプラスしてより一層見応えがあります。

更にこの作品では、京本さんや真田さん、八犬士の活躍以上に、悪役が実にいきいきと描かれているのも魅力のひとつです。特に玉梓役の夏木マリさんの、恐ろしくも妖しすぎる美しさや、萩原流行さんの妖しい魅力溢れる熱演は必見です。

宣伝のため映画雑誌はもちろん、当時のティーンエイジャーの愛読誌(笑)にも掲載された、京本さんの美しすぎるグラビア写真も映画同様大変話題になりました。あの男装の麗人と見まごうほどの、白塗りポニーテールな美剣士・京本さんの姿に度肝を抜かれた方も多いでしょう。当時ブレイクしかけだった”京本政樹”の名を一気に世間に知らしめた記念すべき作品です。

1983年12月10日

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