● キューティーハニー  ●

♪この頃流行の女の子 1970年代、お色気たっぷりなセンセーショナルな映像とストーリーで大きな話題を呼び、その後も根強い人気に支えられ、24年後の1997年にも再アニメ化された巨匠・永井 豪氏の名作「キューティーハニー」。誕生から30年余の歳月を経て、一段とパワーアップして今度はスクリーンに帰ってきました。
「新世紀エヴァンゲリオン」でアニメ界に新しい旋風を巻き起こした庵野秀明監督が、グラビア界のアイドル佐藤江梨子を主役に据え、デジタルコミック・シネマ=実写とアニメを完全にフュージョンさせた新たな映像表現、という全く新しい試みを取り入れた新感覚の次世代娯楽作品です。


タチバナ総合商事に勤める如月ハニー(佐藤江梨子)は、いつも明るく元気な女の子。万年係長やお局様にいびられ、お茶汲みと雑用に追われながらも、おにぎりパワーで残業も乗り切る日々。ある日、そんな彼女がおじさまと慕う、亡き父の友人・リョウウ宇津木博士(京本政樹)と電話中、おじ様が謎の悲鳴を残し失踪してしまう。
博士を誘拐したのは、謎の秘密結社パンサークロー。彼らはハニーの父・如月博士が開発した「iシステム」とそれを施された「キューティーハニー」の秘密を探るため、博士を囮にハニーをおびき出す作戦に出たのだ。
早速、博士の救出に向かったハニーの前に、自称・新聞記者の早見青児(村上 淳)や、かねてからハニー捕獲を狙っている警察庁公安8課の秋夏子警部(市川実日子)が 現れる。最初は反目し合う3人だったが、しばしば協力し合ううち、互いの中に奇妙な友情が芽生え始めるのだった。


全篇漫画よりも漫画らしい荒唐無稽なストーリー展開と、ハニーやパンサークローを始めとする面々のきらびやかなコスチュームと濃ゆ〜いメイクの数々が目に楽しく、バックに流れる♪ぱっぱっぱやっぱ ぱやっぱ〜Hoo! というお気楽なスキャットが象徴するように、いい感じに肩の力が抜けて楽しんでいたら、最後に思わずほろっとさせられていた、そんな不思議な感覚を味わえる作品です。
デジタルコミック・シネマの名が示すとおり、随所に特撮とアニメーションが散りばめられた映像は、アニメと実写の移り変わりもスムーズに、出演者の誰もが、出来上がりを見るまではどんな感じに仕上がるのか想像もつかなかった、という見事な特撮の数々に圧倒されます。

とある席で庵野秀明監督と意気投合した京本さん。その直後に出演要請を受け、多忙なスケジュールの合間を縫っての急遽出演となりました。特別出演のため、出番は殆どないかも?との不安を裏切り、台詞こそ冒頭のみですが、さりげなくキーパーソンとして要所要所で顔を出すという意外に美味しい役どころでした。

ハニーがおじさまと慕う、一見ダンディーな宇津木博士の特徴は、何と言ってもその役立たずぶり。
研究一筋の博士ゆえ仕方がないとは言え、最初から最後まで、ひたすら無力に誰かが助けてくれるのを待つ姿は、呆れを通りこし唖然とするほど。
しかし、ゴールドクローvsハニーの闘いでは、激しい戦いに瓦礫が舞い皆が逃げ惑う中、1人ばさばさと白衣の汚れを払うお茶目な部分も併せ持つ、何とも不思議な人物です。
更に、宙吊りにされたり、いきなり巨大化させられりたり、とこれまでにない姿を楽しむことが出来るのもポイントのひとつです。特に巨大化された博士の迫力溢れる美しさは、機会があれば是非、映画館の大きなスクリーンで味わってほしいものです。

博士以外で個人的にお薦めしたいのが、パンサークロー四天王中最強戦士ブラック・クロー(及川光博)。アシュラ男爵(『マジンガーZ』の有名悪役)を彷彿させる、白と黒のツートンカラーで構成された風貌と、指1本の動きにまで見られる徹底したナルシストぶりは、一見の価値アリです。特にジルタワーにおけるハニーとの死闘の際に披露した、「ブラック・クローの歌」の楽しさは、一度目にしたが最後病み付きになります。劇中『2番はおいておこう』と1番のみで マイクを置かれた時には、本気で「もっと聴きたい〜〜」と思いました(笑)。
日頃京本さんを「兄やん」と慕われる及川さん。せっかく同じ作品に出演しながら、絡みが一度もなかったのを残念がっておられたそうですが、私もそれが残念でなりません。

京本ファンとしては、少々物足りなさもある作品ですが、色んな意味で日常を忘れさせてくれる楽しい作品です。

2004年5月1日

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