● 或る死神の肖像画  ●

2000年12月に発売された、ホラーゲームソフト『TERRORS 2』との連動企画でフジテレビが制作したオリジナルドラマ『TERRORS』。
ゲームのシナリオをベースに5つのオムニバスストーリーを展開。主演に後藤理沙、真鍋かをりetc.アイドルを起用し、テレビドラマではなくDVDとビデオ全5編(各話1巻ずつ)にて発売されました。

この「或る死神の肖像画」はそのうちの1作。"フジテレビ ビジュアルクィーン2000"に輝いた一戸奈未さん主演で、とある病院を舞台に起こる出来事を描いた作品です。京本さんはこの作品に、佐賀という不思議な絵を描く画家の患者役で出演されました。

新人看護婦の奈未(一戸奈未)は、出勤早々1人の男に助けを求められる。職員たちの静止を振り切り、「あなたの愛が必要だ、薔薇の花に殺される!」と意味不明な言葉を繰り返す彼の名は、佐賀聖慧。不気味な絵を描く患者として、医師や看護婦から忌み嫌われる存在だった。
奈未は先輩看護婦・聡美(五十嵐いずみ)の言いつけで その佐賀の世話をすることになる。恐怖を抱きながらも、必死に看護するうち彼の心の奥に潜むものに気づく奈美。そんな中、佐賀が描いた絵の悲劇が次々と起こり……。

ホラーを題材にしたこのシリーズ。冒頭の『私には見える、このページを開こうとするあなたの指が震えているのが』という呼びかけのとおり、物語が進むにつれじわじわと背筋が寒くなる感覚に襲われます。
次々と起こる悲劇の衝撃的な映像もさることながら、それ以上に怖いのが京本さん扮する佐賀の言動。
普通に話していたはずが、突然感情が爆発したり、音もなく現れた時の無表情の恐ろしさetc.本当に危ない人なのでは?と思わせてしまう、鬼気迫る演技は必見です。 特に、奈未に何故自分が絵を描いてしまうのか、を説明するくだりで見せる一瞬の変化。これはもう京本さんならでは、の迫力・真に迫った演技にもう何度も見てわかっていても、身震いせずにはいられないほどです。

そんなエキセントリックな言動を見せる一方で、屋上で1人寂しくハーモニカを吹く佐賀。この時の少し丸められた背中と、ハーモニカを持つ手つきに注目です。人が忌み嫌う絵を描かずにはいられない、彼の心象風景を映しているかのような仕草、虚ろな表情が何とも切ないです。
度々登場するこの屋上でのシーン。夕陽の美しさや、その反射が作り出す陰影の妙、更にこれでもか、というくらい様々な機微に富んだ表情・声の数々など見どころがいっぱいです。

そして、やがて訪れる終幕。
ここでは敢えて触れませんが、出来ることならまだ未見の方は詳しいことは知らずに見て欲しいラストです。
30分弱という短さながら、劇中、佐賀が繰り返し言ったとある言葉についてや、最後まで描かれなかった”何故、彼は絵を描かずにはいられないのか”等、様々なことを 考えずにはいられない、味わい深いドラマです。

2001年1月25日

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