●  温泉マル秘大作戦!5「仕掛人vsホテル買収人
山口県長門温泉郷をめぐる謎の連続殺人!
下関のトラフグと日本海仙崎イカの究極料理! ●

旅館コンサルタント業界のカリスマ、城ノ内愛子(野際陽子)が経営する城ノ内コンサルティングの精鋭、星野さつき(森口瑤子)、島慎之介(東幹久)、岩田幸平(村田雄浩)、森田梢(高樹マリア)ら温泉宿の仕掛人たちが、経営不振の旅館立て直しと連続殺人事件に挑む人気シリーズ「温泉マル秘大作戦」の第5弾。


山口県長門温泉郷にあるホテル「西京」の女将、西邑妙子(烏丸せつ子)の依頼で西京へやってきたさつき、島、梢の3人。到着早々さつきは真田信吾(京本政樹)と偶然出会い喜ぶ。真田はさつきがかつて東都銀行に勤めていた 頃の上司であり、さつきにこの仕事を教えてくれたいわば恩師であり、今はフリーの経営コンサルタントをしており、休暇を利用して長門温泉郷にやってきたのだった。
早速3人は身分を隠しそれぞれの持ち場で働き始め、立て直しのプランを練ることに。同じ頃、さつきは西京に長期滞在客としてやって来た真田と再会する。しかし宿泊を申し込む真田に女将も社長の竜一(山田辰夫)も渋面を作る。実は、女将の妹・綾子(古川りか)は真田の妻であり、4年前に病気で他界していたのだった。
そんな矢先、「西京」の板長・神田真輔(なべおさみ)の弟子だった男が殺害され、板長が殺人容疑で連行される。
板長の無実を証明するべく調査を開始した岩田は、西京がここ数年旅館買収で急成長しているAK観光のターゲットになっていることを突き止める。AK観光の手口とは、狙った温泉地の有力者を買収し、自社の息のかかった経営コンサルタントを送り込み経営を悪化させたところを買い叩くというもの。

板長不在にもめげず、旅館の再建に乗り出したさつきに真田は自分に出来ることなら何でも協力する、と約束。実際にことあるごとに何くれとなく相談にのり、アドバイスをし始める。さつき達が次々と提案する再建プランに妙子は目を輝かせ、順調に行くかと思えた矢先、AK観光のやり手、石井一也(井田國彦)が客として現われ難癖をつける。さつき達の逆襲に遭い、一旦は退却した石井だったがその様子を 真田が見つめていた。

やがて、岩田の尽力で無実が証明された板長が西京に復帰。さつき達も本当の身分を明かし、いよいよ再建計画が本格的にスタートする。
そんな中、真田がAK観光の手先だということが判明。かつての真田を知るさつきは信じようとはしなかったが、城ノ内から真田の過去を、竜一から過去の事件に絡んで生まれてしまった、綾子を巡る真田と女将の確執を聞かされる。
城ノ内から真田を信じたいのなら、自分の力で本当の彼を呼び戻すよう諭されたさつきは、彼に昔の真田に戻ってくれるよう懇願するがにべもなく拒絶されてしまう。本気で妨害に乗り出した真田の策略により窮地に追い込まれるさつき達。
そんな中、真田とともに西京の乗っ取りを進めていた石井の撲殺死体が発見される。重要参考人として連行された、長門温泉郷の開発本部長・本間浩之(長江健次)は容疑を認め、 事件は解決したかに見えたが、鑑定の結果真犯人は別にいると判明。
果たして石井を殺したのは誰なのか、そして暗礁に乗り上げたさつき達の再建計画は上手くいくのか・・・!?


この作品で京本さんが演じたのは、上述したとおりさつきのかつての上司で、仕事の素晴らしさを教え込んだ恩師・真田信吾。
かつては窮地に立たされた経営者を救う使命に燃えていた心優しい銀行マンだったが、顧客の1人に裏切られたことから環境が一変。愛する妻と引き裂かれ、誰も何も信じられなくなった末に悪魔に魂を売るが如く、金の亡者に成り果てた男。 しかし、心の奥底では今も亡き妻と妻が愛した旅館・西京への思いを秘め、憎まれ役に徹しながらさつきとは別の方法で西京を再建させようとしていた哀しい人物。
黒やグレーのタートルに黒・紺のスーツ、黒のロングコートと全身ダーク系で固めた中に、差し色として取り入れられたエンジや鮮やかなオレンジのマフラーが目を惹きます。
前半はさつきにかつての上司として優しい笑顔を見せながらも、一方では翳りのあるシニカルな表情がいかにも腹に一物ありそうで、見る側に今回もやっぱり犯人?犯人だよなぁの思いを強くさせます。
特に携帯電話を使ったちょっとした仕草や、真一文字に結んだ口をほんの少し横に引き口元は笑顔を作っているのに目が異様に冷たい、京本さん独特の表情が一段と怪しさを感じさせてくれます。
その一方で、銀行員時代の回想シーンでは御馴染みの耳かけ&おでこ半だしヘアーで爽やかな笑顔をたっぷり見られるのが何とも嬉しい限りです。意外と似合いすぎな銀行員の制服に加え、差し入れに来た奥さんを誉められ、「ま、ちょっと自慢かな」と細かな手振りつきで見せる得意げな表情は必見。
今回も毎度お馴染みの犯人役ですが、出番がとにかく多い上に、単なる犯人ではなく様々な不幸が重なり葛藤の末に……という見せ場がたっぷりのとても美味しい役どころなのが嬉しい誤算です。間違ったやり方ではあったにせよ、純愛を貫く姿には思わずホロリときてしまいます。

随所に笑いどころも織り交ぜたテンポのよいストーリー展開で最後まで飽きさせず、同時に番組のもうひとつの見所である温泉旅館の裏側・魅力もたっぷり堪能させてくれます。 ラストで披露される、慎之介の創作料理の見事さと生まれ変わった西京の姿には、思わず長門温泉郷に行ってみたい!と思ってしまいます。
「順之助様〜」とおきゃんな娘ぶりを発揮していた旧名・灘陽子さんの見事な成長ぶりもさることながら、ごく個人的にはン十年ぶりに見た女将役の烏丸せつ子さんの変わらぬ美しさ、あのサウンドストリート時代を思い出させるさばさばとした口調がとても懐かしい1本でした。

2008年1月19日

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