●● 名探偵キャサリン3−花の棺− ●●
キャサリンことカメラマン・希麻倫子(かたせ梨乃)が見事な推理で事件を解決してく人気シリーズ第3弾。かたせさん扮するキャサリンシリーズのドラマ化としては
3作目ですが、原作ではこの作品が記念すべきキャサリンシリーズの第一弾として1975年9月に刊行されました。
また、今回の「花の棺」は1979年土曜ワイド劇場枠『京都殺人案内・花の棺』として放映されて以来、2度目のドラマ化です。尚、この作品は2005年4月にも再び土曜ワイド劇場『山村美紗サスペンス 花の棺〜京都名門の華道家元、不倫の連続殺人!
赤い風船と密室のトリック女たちの華麗なバトル〜』のタイトルで映像化されています。
2006年にも没後10年を記念してスペシャル版が作られたキャサリンシリーズ。助手は既に四代目の四郎(丸山隆平@関ジャニ∞)まで来ていますが、今回の3作目までは初代の浜口一郎(赤坂晃)が務めています。
平成10年2月、京都宝ヶ池のほとりで華道界二大家元のひとつ、東心流次期家元とも噂される気鋭の華道家・小川麻衣子(大沢逸美)の個展が開かれていた。そこへ東心流家元の東郷流風(天田俊明)が乗り込み、麻衣子と罵りあった挙句「お前は破門だ」との捨て台詞を残していった。取材に訪れていたため、その場に居合わせた希麻倫子ことキャサリン(かたせ梨乃)は、東郷が投げつけた花瓶で怪我をした
麻衣子を近くの病院へ連れて行く。
その数日後の2月23日、空也堂で麻衣子が何者かに絞殺される事件が発生。事件現場には碁盤の目にX印が4つ書かれた紙片が落ちていた。
麻衣子と東心流の間に確執があったことから、警察は東郷を容疑者と睨む。一方、倫子は麻衣子の恋人であった西川和彦(西川浩幸)を訪ねるが、和彦は真っ向から犯行を否定。しかし、和彦の父は京雅流家元である西川鳳(鶴田忍)。東心流と京雅流は互いに激しく敵対しており、鳳は麻衣子と和彦の結婚に強く反対していた。
そんな中、近々京都で開かれる華道界の次期会長選挙を巡り、新興勢力・新華流家元、山野華子(山村紅葉)が何者かに襲われているところを助けた倫子と助手の浜口一郎(赤坂晃)は、華子から
会長の座に固執する東郷が画策していることを聞く。
会長選挙当日の2月26日。京雅流家元、西川の屋敷で開かれた選挙の結果、西川が会長に選出され、東郷は怒りの言葉とともに退出。その数時間後に会長に選出されたばかりの鳳が茶室で死体となって発見された。
茶室は完全な密室であったことに加え、当日は降雪があったため、痕跡を残さずに何者かが離れにある茶室に侵入することは不可能、と見られることから自殺の線も考えられるが、警察、倫子ともに他殺の見方を強める。
一方、西川殺害の重要参考人とされる東郷も、会長選挙後から行方不明となっていた。心当たりを探すもいっこうに発見できず、皆が焦る中、倫子は麻衣子の死体の傍にあった紙片が京都の地図を示していることに気づく。
それによれば、一連の事件は全て堀川通沿いで起こっており、残る一条と七条のどちらかで次の事件が起こるというのだ。
しかし、次に事件が起こったのは滋賀県にある琵琶湖オートキャンプ場。狩矢警部(西岡徳馬)は推理が外れたとなじるが、納得がいかない倫子は翌朝、一郎と七条にある
興正寺前に手配中のキャンピングカーを発見。中には東郷の刺殺体が入れられていた。
やがて、前夜の検問で意外な人物麻衣子を診察した病院の外科医息吹信吾(京本政樹)が引っかかっていたことを知った倫子は、早速息吹の病院を訪ねるが、逆に息吹に拉致されてしまう。
倫子の機転で駆けつけた一郎により難を逃れるが、息吹を取り逃がしてしまう。
息吹を指名手配する狩矢らをよそに、倫子は主犯は別にいると睨む。調べを進めるうち浮かび上がってきたのは意外な人物だった。
キャサリンシリーズ初登場。今回、京本さんが演じたのは、外科医の息吹信吾。自身の病院を持つ傍ら、週に一度大学病院にも出向する笑顔の素敵な一郎曰く「(倫子の)好みのタイプ」。ちなみにこの時、からかいがてら息吹の真似をする
一郎君にも注目です。
柔らかな物腰と優しい笑顔の素敵なお医者様ですが、実は東郷の隠し子であり、捨てられた上亡くなった母の無念を思い犯行に加担。察した倫子を病院に閉じ込め、医者ならではの
やり方でいたぶる怖い人物です。後年のシリーズでは、新境地を開いたともいえる物静かな画伯で好評を博した京本さんですが、今回は視聴者の希望どおり(?)な犯人役です。
前半でのいかにもモテそうないい男から一転、中盤での上述の倫子をいたぶるシーンで見せる一種猟奇的な振る舞いは、京本さんならではの不気味さに溢れ、途中で助けが来るとわかっていても怖さをそそります。
実際の行動部分も見ものですが、この場面の直前、来るべき人物に備え用意した白手袋をほお擦りするシーンで見せる表情がたまりません。次のシーンで自ら語ることになる、母への想いが伝わってくる、
何とも切ない表情です。
今回も犯人役ですが、この息吹は単なる悪人では決してなく、共犯したのも愛する人の為、更にその彼女を庇う思いも含んだものです。その思いは純愛と言えるほど深く、利己的な面が極めて薄い、数ある犯人役の中では珍しい部類です。
その為、いかにも悪人の部分より寂しげな思いつめたような表情が多いのが特徴です。
出番は冒頭から登場する上に、犯人なので中盤からラストまでかなり多く、終盤では京本さんには珍しい、やや濃厚なラブシーンも見られます。
サスペンスの要である謎解きもしっかりと手ごたえがあり、密室のトリックを始め、キャンピングカーを巡る手口等、どれも思わずなるほど!と唸ってしまいます。
お馴染みの狩矢警部、一郎とのやりとりも楽しく飽きさせない展開に仕上がっています。
あと、おまけのお楽しみとして、一郎君の美しい艶姿も見逃せないポイントです。上背があるのでアレですが、似合うという点で言えば恐らく京本さん以上かも(笑)。
1997年4月7日
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