●● 北ホテルV ●●
古谷一行扮する、元警視庁刑事の沢地慎吾が経営する小樽の北ホテルを舞台に繰り広げられる
事件を厳しくも温かな視点と見事な推理で解決するシリーズ第三弾。
旭川の丸屋デパートで、2人組と思われる強盗に売上金を強奪される事件が発生。
犯行に使ったと思われる車が、北ホテル周辺で見つかったことから、沢地のもとにも刑事が聞き込みに訪れる。
犯人の1人は逃走の際、左腕に傷を負っているという。
事件と前後して、北ホテルには何やら訳ありな7人の宿泊客が集まってきた。
東京から来たという近藤孝志(大沢樹生)・杏子(中山忍)夫妻、5歳の孫・亮介(吉川史樹)をつれたというを連れた丸山春美(田島令子)。半日遅れでやってきた夫の誠治(西田健)は左腕に包帯をしていた。
全身黒づくめにサングラス、でふらりと現れた野村洋介(京本政樹)、常に誰かを探している風な無口な和田(本宮泰風)の7人。
刑事の話を立ち聞きし、全員が怪しいと色めき立つ娘・真実(垣内彩未)を嗜めつつ、宿泊客を伴い小樽名物”雪明りの道”見学に出かけた翌朝、
和田が海岸で刺殺体となって発見される事件が発生。和田の遺留品から丸屋デパートの事件に強盗が使ったと思われる品々が
出てきたことから、警察は仲間割れによる凶行と睨む。
そんな中、前日宿泊予定を入れていた、沢本愛子(細川ふみえ)が薫(有森也美)とともに
北ホテルにやって来た。体調不良で行き倒れていたところを薫に助けられた彼女は、人を捜しているの
だという。更に、愛子を連れ、再び診療所に戻ろうとしていた薫の前に、数時間前にチェックアウト
したはずの杏子が額から血を流して飛び出してきた。夫の身を案じる言葉を呟きながら意識を失った
彼女を乗せ、2人は再び北ホテルへと戻ってくる。
折悪く酷くなった大雪のため、ホテル周辺の道路は閉鎖され、
沢地は宿泊客とともに、杏子を近くの保養所にある診療室へと運び込む。
意識を取り戻した杏子の証言から、沢地は近藤の救出に向かうが、一足遅く近藤は謎の言葉を残して
息絶えた。次々と引き起こされる殺人事件に、宿泊客も次第に互いに疑心暗鬼に駆られ始める。
しかし、野村の証言から実行犯の1人と目されていた和田は事件とは無関係な被害者だったことが
判明。果たして一連の事件の真相は・・・?
登場する人物すべてが実に怪しく、誰もが犯人の匂いを漂わせたこの作品では、随所にヒントらしきものを
折り込み、視聴者も沢地と一緒になって推理が楽しめる仕掛けになっています。
ただ、犯人役にふさわしい役者陣を揃え、仕掛けを巡らした割には結末が少々ありきたりすぎるものになってしまったのが残念でした。
さて、番組の終了で結果的にこれが最後の火サス出演となった、この作品で京本さんが演じたのは、マジシャンに見せかけた
興信所の探偵・野村洋介。
あらすじにも書いたように、初登場時は雪の中を全身黒尽くめにお洒落なサングラス。最初の足のアップの時点で
既に「な、なんて怪しい〜」と思わせるほど全身から怪しいオーラが立ち込め、
ちょっとした仕草や口調全てに気障っぽさが漂う、それでいて子供にはとても優しい謎の人物です。
今回はいつもの多彩な表情はもちろん、宿帳に書き込む時のペン使いや、さりげなくキーをお馴染みのかんざし回しのようにくるっと回したり、と
細かな手の動きが見どころです。
その中でも必見は何といってもこの作品のために練習された、というマジックの数々。しなやかな指先から繰り出されるマジックの鮮やかさには、思わず
ストーリーを忘れて魅入ってしまうほど。
器用な手先と豊かな表情をもつ京本さんならではのマジシャンぶりを堪能してください。
出番はそれなりにあるものの、役柄的には可もなく不可もなく、といったところでファンとしてはちょっぴり物足りなさを
感じる部分もありますが、子供相手に見せる優しさに満ち溢れた笑顔が見られる特典でカバーです。
京本さん以外では、薄幸で健気な若妻を演じる細川ふみえさんや、元・光GENJIの大沢樹生さんのが熱演が光る1本です。
2005年3月8日
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