● カリスマ美容師殺人事件 モデル橘あずさの超推理  ●

1999年春頃から、若い女性を中心に超人的なヘアカットの腕前を誇る美容師が口コミ等を通じもてはやされるブームが発生。 特に人気の高い美容師は”カリスマ美容師”としてテレビや雑誌に引っ張りだことなり、彼の言動が様々なメディアで取り上げられ、 その人気はタレント並みかそれ以上という強者も登場、まさに一世を風靡しました。
そんな時代の波に乗れ、とばかりにカリスマ美容師を題材に製作されたサスペンスが今回の作品です。


オフィス麗子所属のトップモデル・橘あずさ(とよた真帆)は、NEW WAVEシザーコンテストに特別ゲストとして招かれることに。 このコンテストは、優勝者には1年間のパリ留学と帰国後はスポンサーから独立資金が援助されるという、美容師にとっては垂涎の的な コンテスト。
会場には、当代きってのカリスマ美容師・エンディ小谷(京本政樹)と愛弟子・西条アンナ(大竹一重)、エンディに次ぐカリスマ美容師、 WING BIRDのオーナー羽島光一(竜川剛)と愛弟子・三島瞳(建みさと)ら名だたる若手美容師が勢揃い。戦いはエンディと羽島の愛弟子による 一騎打ちと見られていたが、決勝を前に瞳の道具が何者かに盗まれ、瞳は止む無く棄権せざるを得なくなる。
そんな波乱含みで始まった決勝。皆が注目する中、アンナが突然倒れ、死亡する事件が発生。
アンナの足元に落ちていた櫛から青酸カリが検出されたことから、何者かに毒殺された疑いが強まる。
南青山署の川久保刑事(西田健)は、アンナと瞳がライバル関係にあったことや、コンテスト当日争う2人を見たとの 目撃証言、決勝を前に瞳が突然姿を消したことなどから、瞳を重要参考人と睨み捜査を開始する。

一方、かつて瞳に自殺を思い留まらせてもらったことや、行方をくらました瞳より送られてくる携帯メールの署名から、瞳の無実を信じるあずさは、 麗子(柴田理恵)の制止もきかず、独自に犯人捜しを始める。あずさの身を案ずる麗子は、ボディー・ガードとして カメラマンの八坂吾平(加勢大周)をつけ、2人はエンディに恨みを持つ、HEVAN'S ENDYの美容師・向井信吾(井出州彦)が 怪しいと睨む。
今度はエンディの身が危ないと感じたあずさは、閉店後に店を訪れ向井にカットをしてもらう。その数時間後、とうとうエンディが 刺殺される事件が発生。
瞳の母・みゆき(朝加真由美)から、瞳が実はエンディの子だと知らされ驚きつつも瞳の無実を固く信じるあずさ。
だが、エンディを刺した犯人が瞳と同じ左利きと判明したことから、警察はますます瞳に疑いの目を向ける。
そんなとき、八坂が写した写真から意外な人物が浮かび上がる・・・。果たして真犯人は!?


当時、『アーバンポリス24』で週の半分は大阪という多忙な日々を送っていた京本さん。主役のとよた真帆さんからのどうしても共演したい、というラブコールに 応える形で出演となった京本さんが演じたのは、HEAVEN'S ENDYオーナー・エンディ小谷。
冒頭、「エンディ!?」と八坂に思い切り訝しがられたように、日本人だけれど何故かエンディ。少々突っ込みたい気もしますが、その辺はカリスマ美容師だから、ということに しておきましょう。
カリスマ美容師として、業界で絶大な権力をもつエンディ。自身の野望の為には手段を選ばず、これはと見込んだライバル店の美容師を甘言で釣り、ライバルとその店を 潰すというあこぎなやり方で、劇中「これじゃ殺されても仕方ないわね」とまで言われてしまうワル。
常に醒めた様子で、立ち居振る舞いにもキザな香りが漂い、 明るいライトグレーのスーツに、『はるちゃん5』の若社長がよく着ていた感じのベビーピンクのシャツにローズピンクのポケットチーフ がよく似合う、まさに絵に描いたような・・という言葉がピタリと嵌るエンディ。
あらすじでも紹介したとおり、鋏でメッタ刺しにされる、という衝撃的な最期を遂げるエンディですが、出番は意外と多く冒頭からいきなり ベンツで颯爽と登場し、ニヒルな笑みでカリスマぶりを発揮してくれます。
美容師役ということで、劇中何度か見られる、器用な手先を活かした華麗な鋏さばきをじっくり堪能してください。
しかし、何と言ってもおすすめは、終盤の回想シーン。若かりし頃、寝食を惜しんで修行に励むエンディです。
ここでも見事な鋏捌きを披露してくれるの ですが、それ以上に驚きはなんとこの時のエンディ、耳かけヘアで前はアップぎみにサイドに流す、というこれまでに ないヘアスタイルなのです。仄暗いライトに照らされた横顔が、思わずドキリとしてしまうくらいセクシー。そこで語られる若きエンディの仕事に かける情熱と合わせ、実はそんな悪い人ではないのでは?と思わずにはいられません。
事件の本質と関係ないためか、その辺エンディの人柄について、 もう少し掘り下げる描写がなかったのが惜しまれます。

いつも多忙な京本さんですが、この作品が撮影された時は、東京−大阪の往復に加え、数本の仕事をかけもち、といつにもまして多忙だったため、どんな話だったのか撮影終了と同時に忘れてしまい、後日共演者の方々と 遭遇した際、「ところで犯人は誰だったの?」とうっかり聞いてしまい、苦笑させてしまったという何とも京本さんらしい微笑ましいエピソードを残しました。
また、ドラマでは不仲だったエンディと弟子・向井ですが、撮影中、向井役の井出州彦さんに愛用のPCを診てもらっていたところ、時間切れとなりそのまま次の現場まで 井出さんを拉致。お礼に食事をご馳走してあげる、というこれまた微笑ましいエピソードを残すことになりました。

2001年8月11日

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