●● 赤い霊柩車6 婚約者は死者 ●●
1992年の第一回以来、好評を博し今も続く山村美沙原作、片平なぎさ扮する、石原葬儀社社長・明子が京都府警の狩矢警部(若林豪)らとともに
殺人事件を見事な推理でもって解決する「赤い霊柩車」シリーズ第六弾。
ストーリーを紹介する前に、霊柩車といえば葬儀の際に遺体を斎場から火葬場に搬送する
車ですが、地域により異なることをご存知でしょうか。
一般には車の上に輿(こし)を乗せた宮型と呼ばれるタイプが、広く普及していますが、
これには大きく分けて関東型、名古屋型、関西型の3種類があります。
宮型部分が車のピックアップ部から立ち上がっているのが関東型で、テレビドラマなどでも
よく見られる最も一般的なモノになります。名古屋型は宮型が関東と類似しているものの、フレームから立ち上がっているのが
特徴。関西型は檜の白木造りで塗装が一切ないのが特徴です。
関西の方から見れば、関東や名古屋型はかなり派手に映ることでしょう。しかし、そんな関東タイプも真っ青なド派手な霊柩車が走っているのが金沢です。
日光東照宮陽明門や平等院のミニチュアが車の上にそのままでーんと乗った、もしくはこれに類似した中も外も金箔仕立ての目にも眩しい霊柩車が、ごく普通に街中を走っています。
更に富山のとある地域では、今回のドラマのタイトルにもなっている赤い霊柩車が
実際に使われています。浄土真宗の信仰と売薬の赤玉とが結びつき、赤い霊柩車が走るようになったと言われていますが、このように霊柩車ひとつを取っても
地域により様々な違いがあることに驚かされます。
大正時代の大隈重信の葬儀がルーツと言われる宮型霊柩車。最近は洋型霊柩車の普及に押され、少しずつ台数が減ってきているのを惜しむ声もあるようです。
石原明子(片平なぎさ)は、石原葬儀社片腕の秋山隆男(大村崑)とともに、大江原産業の創立30周年記念パーティーに出席。
その数日後、社長の純一(相島一之)が水死体で見つかる事件が発生。
たまたま休暇で訪れていた琵琶湖で現場に遭遇した内田良恵(山村紅葉)より、連絡を受けた明子が驚くのをよそに、秋山は大きな仕事が入ると張り切って現場に急行する。
先代からの付き合いや、大江原産業専務・上山良介(京本政樹)の計らいで純一の葬儀は石原葬儀社が取り仕切ることに。けれども、またしても遠距離恋愛中の恋人・黒沢晴彦(神田正輝)との
デートと重なってしまった明子は渋い顔。
遅れてやって来た純一の妹・由美が上山をなじったりと、色々波乱含みな通夜の最中、今度は上山の元に純一の婚約者・佐田しのぶ(花穂まりあ)が事故死したとの連絡が入る。
当初は、純一の突然の訃報に動揺したしのぶが急ぐあまり、運転を誤ったと見られていたが、死亡時にしのぶが
コンタクトレンズを着用していなかったこと、所持品から携帯電話がなくなっていること、などから狩矢警部(若林 豪)らは、
殺人事件として捜査を開始する。
遺産相続の件で純一に恨みを持つ由美。しのぶとの政略結婚により、純一に捨てられた香山由香里(鳥越まり)、専務の上山が
容疑者として浮かぶが、上山にはどちらの死にも完璧なアリバイがあり、同様に由美にもアリバイが成立したことから、一気に由香里への
疑いが強まる。
一方、しのぶの着衣から2人の死に疑問を持った明子は、晴彦とともに独自の聞き込みを開始。由香里の故郷を訪ねた2人は、そこで
思いがけない事実を知る・・・。
葬儀についてのあれこれを学びながら、明子・晴彦とともに事件の謎を解きほぐしていく名物シリーズ。
個性溢れる石原葬儀社の面々プラス晴彦ら、レギュラーメンバーの和気藹々としたやりとりが楽しく、シリアスな殺人事件なのに、
見終わった後に何故かほのぼのした気持ちになる、金曜エンタテイメントという冠にふさわしいコミカル要素満載なサスペンスです。
この作品で京本さんが演じたのは、放蕩息子を立てながら、大江原産業の実務を一手に引き受ける敏腕専務・上山良介。
ブラウン系や淡いブルーグレーの細身のスーツをパリッと着こなし、テキパキとそつのない言動で仕事をこなしていく様は、
まさに絵に描いたようなやり手、仕事の出来るヤツ、といった印象で、その柔らかな物腰とすっと伸びた姿勢がとてもよく似合っています。
ストーリー自体は、あまり捻りがなく予想通りの展開ですが、その分物語の前半・中盤・クライマックス、と状況が変化していくにつれ、
上山の表情がどんどん変わっていくのが楽しめます。
特にクライマックスでの憤懣やるかたない、といった思いが滲み出る苦渋の表情は必見。京本さんならでは、の細かな仕草ともども、
彼の心情を代弁してあまりある、豊かな表情七変化を堪能してください。
役柄的には・・・ですが、出番も多く、色々同情させられたり、その強さ・身勝手さに感心したり、とどうにも憎めない味のある、個人的には
意外とお薦めな1本です。
1996年10月18日
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