ゴールはあらたなスタート


1998年2月に一度目の流産を経験してからというもの、
私の何よりの願いは「月満ちて元気な赤ちゃんを産むこと」でした。
そのことが私にとってひとつのゴールでもあり、
生まれたその先のことなど、考える余裕はありませんでした。
というより、万一を想定し、敢えて考えないようにしていたのかもしれません。
不育症を克服し元気な我が子を胸に抱ければ、
不安からパッと解き放たれる・・・なんて思っていたのです。
でも、現実はそうでもないのですね。
我が子への愛情の裏返しで「菫に何かあったら・・・」なんて、
心配で心配で仕方ないんですから・・・

生後2日目の朝、こんなことがありました。
「小児科のドクターから赤ちゃんのことでお話があります。」
何の前触れもなく、新生児室に呼ばれました。
病室と目と鼻の先にあるその部屋に行くまで、
不吉なことが次々と頭に浮かんでは消え、
胸の鼓動は高まるは、血の気はひくはで、生きた心地がしませんでした。
ドクター曰く、
「舌に白いもの着いているので診たところ、鵞口蒼だと
わかりました。
小児科の方で治療をしますので、諸々手続きの方を・・・」とのことでした。

はじめて聞く病名におろおろしている
私に、治療内容と合わせ
赤ちゃんがこの病気にかかるのはそう珍しいことではなく、
治療も長くはかからないだろう、
と説明がありました。
とんでもなく重い病気の告知をも想像していた私は、
その一言に気が緩んだのでしょうか、
不覚にもその場で泣いてしまいました。
あぁ、自己嫌悪・・・
ダンナに掻き集めてもらった鵞口蒼の資料を読んで
はじめて冷静さを取り戻した私。
こんなことですっかり気が動転してしまった自分がほんとに情けなく、
先行きの不安を早くも実感してしまいました。

ゴールテープを切ったと思ったのもつかの間、
どうやらこれからが本レース、あらたなスタートのようです