【参考文献】
「日本生殖免疫学会」雑誌 第16巻. 第1号. 2001

「カリクレイン-キニン系の破綻に関連した不育症患者の治療法の検討」

東海大学産婦人科学教室
井面昭文、杉 俊隆、勝沼潤子、岩崎克彦、牧野恒久

赤字の部分は私自身が特に興味深く読んだところです。


【目的】
近年抗リン脂質抗体と第12因子欠乏症が反復流産のrisk factorとして注目を浴びている。抗リン脂質抗体のなかでは、キニノーゲンを認識する抗フォスファチジルエタノールアミン(PE)抗体が妊娠初期反復流産患者に多いと報告されている。キニノーゲンと第12因子はカリクレイン-キニン系の蛋白でutero-placental unitに局在し、bradykininを放出して胎盤血流を調節し、妊娠分娩に重要な役割を演じているといわれている。今回我々は抗PE抗体と第12因子欠乏不育症患者の治療法について検討した。

【方法】抗PE抗体陽性、または第12因子欠乏不育症患者に対して、インフォームドコンセントのもとで低用量アスピリン療法(LDA)、または低用量アスピリン+ヘパリン併用療法(LDA+hep)を施行した。

【成績】抗PE抗体陽性症例(n=96)中、妊娠成功率はLDA群(n=53)は75.5%、LDA+hep群(n=43)は76.7%と差を認めなかった。また、第12因子欠乏症例(n=73)中、妊娠成功率はLDA群(n=43)は79.1%、LDA+hep群(n=30)は93.3%であった。抗PE抗体陽性でなおかつ第12因子欠乏症(n=35)例中、妊娠成功率はLDA群(n=17)は64.7%、LDA+hep群(n=18)は88.9%であった。

【結論】我々は既に抗PE抗体の血小板に対する病原性を報告しているが、抗PE抗体陽性症例では抗血小板療法であるLDA単独群と、LDA+hep併用群間に治療成績の差を認めなかった。第12因子欠乏症例ではhepを併用した方が、成績は良好であった。