住民投票の功罪 (2003.11.21)


 合併特例法には、法定協議会設置についての住民投票の規定(参考)がある。
 簡単にいうと、A町の住民がB村との法定協議会の設置を求めて署名運動を行い、議会の付議までこぎ着けた後、B村の議会で可決されたにも関わらず、A町議会において否決された場合に、再度署名収集をして住民投票となるものである。
 また、合併特例法とは別に、地方自治法上の「住民投票条例制定」によるもある。
 以前は、原発や産廃施設建設の是非などが多かったが、今や市町村合併が中心と なっており、こちらは、合併の是非とか、合併の組み合わせを選択するものである。

 これらは、住民が「合併したい(したくない)」といっているのに、議会が逆の立場をとっている場合において、住民意志の確認のために行われる場合が多い。
  議員というものは、ときに会派や所属政党で議決を行ったりするため、議決結果に民意が反映されない場合もあり、そのような場合のための救済措置ともいえる。
 「議会制民主主義を否定している」といわれる面もある一方、全員参加の住民投票のほうが、 的確に民意が反映されるともいわれている。
 ここで、問題となるのは、「民意=全てを理解した上での意思」であるかどうかということである。
 反対派の人々は、大量のビラを持って「合併すると、住民負担が増える」「あそこの町は、借金だらけだ」などと、合併することのデメリットを強調して地域を回りながら署名集めを行う。
 確かに、住民負担が増えるケースも多い。
 「サービスは高いほうに、住民負担は低いほうに」などということは、普通に考えても難しいし、三位一体改革が打ち出されて以降は、不可能に近いものとなっている。
 話を戻すと、反対派の人々は、「するデメリット、しないメリット」は説明す が、「するメリット、しないデメリット」については、ほとんどふれようとしな いのである。
 ともかく、住民投票が行われた時点では、「民意の反映」には違いない。反対派 に影響された人々は、「合併したくない」という意思をもって、投票するのだから。

 合併反対の運動をしつつ、他の枠組みで法期限までにゴールインを目指すという ビジョンでもあればいいが、困ったことに中には、やみくもに「現在の法定協議 会での合併反対」というケースもある。
 先週発表された地制調答申のとおり、総務省をはじめとする国は、合併しない小規模市町村については、完全に締めあげる意向をはっきりと打ち出している。
 数年後、A町がにっちもさっちもいかなくなり、周辺市町村に吸収合併され、さらに、財政措置も受けられないのでお荷物扱いされ、最終的には周辺部としてさ びれてしまう可能性もある。
 このとき、反対派の人々は、A町住民に対してどう責任をとるのだろうか。
 また、反対派だけでなく、投票までのA町役場の説明責任も重要である。



                                     
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