「E.T. 20周年アニバーサリー特別版 新宿オスカー劇場 2002/5/18 14:30

 今まで観た中でいちばん好きな映画はなんて聞かれたコトは多分誰にでもあると思う。もちろんボクにもある。でも、ボクの答えはこの10年以上ずっと同じ。それがこの「E.T.」のオリジナルだった。ボクはオリジナルを公開当時に家族五人で観ている。当時ボクは10才か11才で、まさに映画の主役のエリオットと同い年だった。そしてボクはまさに「E.T.」の中に入り込んでしまった。映画ってなんておもしろいんだろうと、初めてそう思ったのだ。

 「E.T.」はコドモ向けの映画だと思われがちだが、実は決してそれだけではない。むしろ、オトナ対コドモのそれぞれの立場をきちんと見た物語なのだ。コドモの世界の出来事にオトナが真剣に介入してくる。物語として絶対にないがしろに出来ない部分。真剣に、つまりオトナの立場で関わるか、または物わかりのいいコドモの保護者として関わるか。どちらでもこの物語は成り立ったはずだが、スピルバーグは前者を選んだ。つまり現実世界と対面させていこうという意志があったのだ。

 E.T.というものの造型に関しても、もっとかわいらしい、受け入れられやすい造型にするコトは容易だったはず。ところが現実は、といえばあれである。正直最初は気持ち悪いと思う。M&M'sの重役が“コドモたちがこわがるから、ウチのチョコレートを使うな”と申し入れた気持ちも分からんではない。

 オリジナル当時のボクは、E.T.のかわいらしさばかり観てた。動きとか、観た目のかわいらしさ。それに彼の抱える郷愁と。つまり、当時のボクは彼のコトを忠犬ハチ公と変わらない存在と捉えていたのだ。その思いはビデオリリース後の再会まで続く。

 ところがもちろんそうではない。彼の抱える想いは当時のボクの想像以上であろうし、彼の地球に対する順応能力は凄まじい。それこそハチ公とかのレベルではない。字幕を追っているとあまりよく分からないが、劇中にE.T.の周りで使用されているコトバは決して多くない。字幕ではその都度ふさわしい訳を当てているが、ジツはたいして語彙が豊富なワケではないのだ。その中で彼はコミュニケーションを取ろうとする。そしてそれを成功させる。どんなにつらくとも、彼は笑っていた。

 多分地球の常識で判断していくと、彼は20代後半くらいだろうと思う。地球探索隊に加わった部下その1である。ちょっと想像してみよう。宇宙探索隊の末席に加わったあなたは探索中に現地民に追われ、逃げ出す船にも乗り遅れてしまう。現地民にも捕まったら何をされるか分からない。それが冒頭のE.T.の立場である。ところが彼は隠れたガレージに投げ込まれたボールをコトもあろうに投げ返してしまう。さあ、問題です。あなた、できますか?

 おそらく彼は、地球人の成長過程を知識としては知っていたと思う。だからジブンのところにボールを投げ込んだ小さいのが“コドモ”であるというのは判断できたハズだ。その時点でもう彼は“こいつを使おう”と考えたのか? いや、そうではなく、彼は“コドモなのだから、ちょっとビックリさせれば逃げていくのではないか?”と判断したのではないだろうか。そして“とりあえずゆっくり休ませてくれよ”と考えたのでは?

 ボクはそう想像する。そしてその瞬間には、きっと彼はコドモがビックリする顔を想像してボールを投げ返したに違いない。そしてボクはその思考回路にはとても親近感を持ってしまうのだ。ヒトを驚かせるの好き。

 そしてラストシーン、彼はエリオット少年にひとこと問いかける。彼には答えはわかっていたハズの問いかけ。その答えが必要なのはむしろ質問した側ではなくて、された側であるのを知っていての問いかけ。そして最後のコトバはきっとあらかじめ考えてあったに違いない。きれいに締めていなくなろうと、彼は一生懸命に考えたに違いない。オトナの態度である。それがE.T.の正体だ。

 ずっとそこが素晴らしいとかここが素晴らしいとか考えてきた。それこそこの20年間、「E.T.」について考える時間はたっぷりあった。でも、それらは全て今回のスクリーンを観て消し飛んでしまった。

 今回のポイントはたったひとつ。それがここまで述べてきたE.T.のコトだ。忠犬ハチ公だったE.T.が、行動のひとつひとつに感情的に理解を示せる知的生命体になっていたコト。銃をトランシーバーに変えた、なんてのはハッキリ言ってどうでもいい。ナチュラルにボケる知的生命体から、感情を持ってネタをやる意思疎通対象への変化、それが今回の変更点だ。追加されたシーンにそれは顕著に現れていて、どれもE.T.をそういう存在と捕らえられないと無意味なシーンばかりだ。おそらくスピルバーグは当時、そう感じていたのだと思う。

 この冒頭にも述べたが、ボクの生涯ベストワンは「E.T.」だった。でも、今回のを観て考えを改めた。ボクの生涯ベストワンは「E.T. 20周年アニバーサリー特別版」に変更する。地球に生きとし生けるもの全てに観てもらいたいと、切に願う。

 E.T.はイイやつだから、きっと友達と思えるよ。そう最後に伝えておこう。そしてもうひとつ。ドリュー・バリモアは当時からものすごく可愛かったコトも。

 

 

2002/5/27

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